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「あ! 礼ちゃん、だっ……!」
「礼ちゃんの所為にしないでください」
ぐりと細くて丸い筒状物体を押し込められると
「う、わぁぁぁ……っ!」
知己が恐怖で叫ぶ。
人の肉体ではアリエナイ幾何学的な形状のものってだけでも不気味なのに、ましてやその成分がもたらす刺激の恐怖。
「やめ……っ、あっ! んっ!」
どんなに身を捩ってもそれが外に出されることはない。
将之が押さえているからだ。
「話したら、抜いて差し上げます。話さないなら、更に奥に入れるだけです」
脅しじゃないアピールでグリと中に押し込まれ、慌てて知己は蘇った記憶を堰切ったように語った。
「礼ちゃんの前で敦が余計なことを言ったんだ! だから、口を塞ごうと……だけどっ慌てて! あいつ小さいし、なんだか抱きしめるみたいな感じになって……っ!」
「礼ちゃん、敦君たちに会ってたんですか?」
「は、……博物館で!」
「ああ、そっか。あの時……」
「頼むっ! 早く、抜いてくれっ!」
「……そうですね、嘘はついてないようだし」
と将之は知己の後ろを塞ぐものを抜いた。
「これ」
見るとそれはキャップをつけたままのリップスティック。
「……お前……」
「これも『プラセボ効果』って言うんですか?」
(言わない……!)
「これを後ろにはめてるとすごく熱そうにしてましたね」
(してない……!)
「僕だって鬼じゃありませんから、地獄の責め苦を先輩に遭わせるわけないじゃないですか」
(いや、お前は鬼だ)
「や、いい感じにほぐれているみたいだし。このまま最後まで行っちゃいますね」
「……この状況で……、もう、許さん……」
とはいえ、一度宛がわれたものは容赦なく知己の中に入り込んできた。こうなるともう、知己にとめる術はない。
「あ、やっ……やめっ……」
ずくずくと知己の狭路を確実にリップよりも質量ある塊が押し進んできた。
「い……ぁ……っ」
「んっ。いつもより熱い気がする。さっきリップで解した所為かな」
「やぁっ……!」
「しかも、いつもより締め付けて」
「ん、ん……ーっ!」
過ぎ去った恐怖の後に訪れた快楽がどれほどのものか、将之は分かってやっているのだろうか?
(あまりの振れ幅の大きさに、体がもたない……っ!)
絶頂に達していないのにすっかり一波越えたような疲労感でままならない。身動きとれぬ体を揺すられる激しい抽挿に、知己の怒りや抗議の声がやがて甘えたくぐもった声に変化していった。
―いけないリップスティックマジック・了―
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