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卒業式の再会 1
「なぜ俺が卒業式に出ないといけないんだ?」
「在校生だからだ」
「この俺をくっそ寒い体育館に1時間弱拘束し、あまつさえ歌まで歌わせるとは、いい度胸だな」
「2月だからだ。一応ジェットヒーターはつけている。文句を言うな」
「あったかいのは教師や保護者の一角だけで、生徒はその恩恵にちっともあずかれやしない! そんなことも分からんのか?」
「分かった、敦」
「分かったか?!」
「敦は卒業式出なくてもいい。ただし、欠席にはなるが」
「まあ、待て。悪徳教師。誰も出ないとは言ってない」
2月の終わり。最後の卒業式の練習を終え、体育館でパイプ椅子を壁に立てかけながら、敦と知己のいつもの小競り合いが繰り広げられていた。
「敦ちゃん、機嫌悪いね」
同じく、椅子を片付けながら章が言うと
「俺、多分だけど理由分かる」
と俊也が応えた。
「何?」
「お前、バレンタインデーでチョコ配っただろ?」
「ああ。えこひいきしちゃまずいかなってクラスの人全員に配ったね。それが何か?」
通常の高校なら菓子類の持ち込みを禁止しているが、八旗高校にはそれがなかった。女子がいないためかバレンタインに浮ついた雰囲気にもならない。普段からも、弁当の最後にチョコやポテチ、部活前の○ロリーメイトや○ニッカーズなど取り締まってもキリがない。育ちざかりの男子なら致し方なしと黙認されていた。
「『何か?』じゃねえよ。お前、先生用と生徒用で差をつけただろ?」
「日頃お世話になっているからね。当然だよ」
「堂々とえこひいきしてるじゃねえか。敦がそれで激怒ってた」
知己は「受け取れない」と教室でしっかり断った。
だが、その後に来た人間とタイミングが悪かったのだ。
放課後理科室に行く直前に卿子に呼び止められ、小さくて可愛いチョコをもらったのだ。
鞄は、生憎と理科準備室のロッカーに入れている。だが、このサイズならと白衣のポケットに隠し、いつものように理科室に向かった。理科室には章達が既に集まっているが、大丈夫。すぐに準備室に行き鞄にしまえばバレないと思っていた。
だが、理科室に着いたと同時に現れたのが
「やっはー! 先生、久しぶりー!」
リアルジャイアン・門脇蓮だった。
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