卒業式の再会 2

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卒業式の再会 2

 3月1日。ここ八旗高校は卒業式を迎えていた。  いつもだったら、制服は着ているものの、襟を外してみたり中にトレーナーを着こんだりと思い思いの服装にカスタマイズしている生徒達も、通常の制服の着方をしていた。 (……というか普段がバリエーション豊かなんだよな。ここの子達……)  式場に向かう前のHR、教室内の異様な光景に知己は思った。  皆で通常の着方をしている光景が異様というのも、変な話である。 「詰襟きっちりとめると苦しんだよなー」  ぼやく俊也の横で 「慣れれば、どうってことないだろ?」  敦が答えた。  敦と章は日頃から制服を着崩さずにいた。  敦はなんだかんだで校則はきちんと従う体質だし、章に至っては「オリジナリティ出す方が面倒臭い」と言っていた。  だから、彼らだけは通常運転に見えた。 「それよりも卒業式だろ? 僕は一つ心配なことがあるんだよね」  呟く章に (関わりあった先輩でも居たか?)  と敦達は首を捻った。  部活もしていない章達にとって、縦の繋がりは薄い。  卒業式も強制イベント的にただ在校生として出席するだけ。 「卒業式って、授業なくって楽だよな?」  俊也にとっては、出席すればいいだけの嬉しい日だ。 「心配なことって?」  敦が訊くと 「卒業式だろ? つまり学校行事だろ? だったら来るじゃん……教育委員会の喪女」  章が管理棟の方角の校長室を指さした。  来賓として招かれている教育委員会の者は、校長室で待機している筈だ。 「先生は、どうやらあの喪女に気があるみたいだから、来たらどう恋路を邪魔しようか……ずーっと考えていたんだよね」  馬に蹴られて死んでしまいそうな章の下種発言に 「協力するぞ、章」  俊也が鼻息荒く、身を乗り出した。  9時。朝のHR終了後、知己は職員室に戻った。  章達は体育館入場の9:30までは教室に待機。時間になったら体育館に向かうよう朝のHRで知己に言われた。この隙間時間に、章と俊也は教室を抜け出した。  校長室に、例の女性が来ていないか確認しようと、教室棟から管理棟に急いだ。
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