卒業式の再会 2

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「もう来てるかな?」 「式開始20分前だもん。来てるよ」  管理棟には西階段と東階段がある。  章達はわざわざ遠くの東階段まで回り込んだ。東階段だと、職員室の前を通らずに校長室の脇に出ることができる。 「どうせいつもの喪服黒スーツだから、校長室覗いたら居るかどうかなんてすぐに分かるはず」 「居たらどうする?」 「当然。職員室に戻った先生と接触させない。それだけだ」  職員室と校長室は隣り合っている。  知己が彼女に、もしくは彼女が知己に会おうと思えば簡単に会える状況だ。 「あの女、ラノさんファンだからな。先生に会いに行くかもしれないだろ? ……って、敦ちゃん。なんでついてきたの?」  教室を抜け出すときには居なかった敦が、いつの間にか章達の後を追ってきていた。 「こんな面白そうなこと、俺抜きでするな」 「これ、面白いか?」  俊也が訊くと 「とりま、あの悪徳教師の小綺麗ですました顔が、好きな女を前に取り乱す姿は面白そうだ」  敦がニヤリと笑う。 「絶対にそんなのヤダ」  章は心底嫌そうに顔を顰めた。 「なんでだよ?」  「先生が僕以外に取り乱されるなんて嫌だ」 「妙な独占欲を発揮するんじゃねえ」  俊也が章に突っ込んだ。 「ところで、どうやって会わせないようにするんだ?」  校長室の脇・東階段に到達した所で、俊也が訊いた。 「そこまでは、まだ考えてない」  章が珍しく余裕なさげに答えると 「見切り発車かよ」  俊也が呆れていた。  章のことだ。何か策あってのことと勝手に期待していた。 「俺としては、会わせて是非ともあわあわして欲しいんだが」  敦だけは面白がっている。 「それは絶対ヤダってば!」  俊也がちらりと時計を見た。 「とりあえず覗くだけ覗くか? 式開始の時間も迫っているし、そろそろ教室帰らないと俺達が抜け出したの、先生にバレる」 「そうだね、喪女が来ているかどうかの確認だけでも……」  無策の三人が、やっと方針決まった時だった。 「では、会場までご案内します」  と校長室のドアがカラリと開き、校長が先頭に立って来賓を導こうとしていた。 (チャンス!)  と三人は階段脇から顔を覗かせた。 「……喪女、居ねーな」 「その代わり、見た顔が居たね」
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