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それに驚いたのは、校長だった。
今や「梅ノ木グループ御曹司」は、問題児トップランキング堂々の1位である。2位は粗暴な行動と圧倒的低空飛行の学力で須々木俊也。意外にも吹山章は、テスト白紙事件以外は成績も優秀で表面上めだつ行動は見られなかったので、ランキング外である。ただ、1位と2位といつもつるんでいるという点では、気になる存在ではあった。
その3人が来賓の、しかも教育委員会の者に話しかけたのだ。
何かとんでもない粗相をしでかすのでは……と、校長は気が気ではない。
顔面真っ青の校長から滝のような冷汗が流れた。
それで将之は
「彼らとは、ちょっとした知り合いなので大丈夫ですよ。この後、彼らと話をしてもいいですか?」
と、ことわりを入れた。
(梅ノ木グループ御曹司は、教育委員会にまで知り合いがいるのか?)
校長は嫌な汗を拭きつつ、
「式自体は終わりましたので、中位さんさえ良ければ……」
と言うと、その場を不安そうに、だがとりあえず厄介払いができたと胸をなで下ろした。そして、将之だけ廊下に残ると、校長は他の来賓と共に校長室に入った。
「おい。『大丈夫』って何だよ?」
早速、俊也が噛みつく。
「行動力ある君達のことだから、校長先生も心配されているだろうと思って。良くなかったかな?」
「いや。むしろ、部外者を追っ払ってくれて感謝」
「章君は、相変わらずだね」
と将之は答えた。
しかし、場所が場所だ。
職員室・校長室の並ぶ管理棟二階廊下では、教師の目があり話がしにくい。それに、いつ、三人が抜け出したことに気付いた知己が帰ってくるとも限らない。
「場所を変えたいんだけど、こっち来てもらえる? 色々と話を聞きたいんだ」
章は、将之の腕を取った。
「いいよ。むしろ君たちが先輩と違って理性的で良かった」
「先生は、ライオさんに対してそんなに狂暴なのか?」
俊也が訊くと
「普段はあんな感じだけど、時々バーサーカーになるね」
素直な感想を将之は語った。うっかり
「その上、スイッチが入ったらインキュバスにもサキュバスにもなる」
と言いそうになったが、先日知己から「こいつら、これでも高校生」の言葉が脳裏に蘇って、それはかろうじてとどまった。
(危なかった。言ったら、またシバかれるところだった)
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