卒業式の再会 3

4/6
前へ
/778ページ
次へ
 将之と三人の間に沈黙が訪れて、うっかり見とれていたことに気付いた。 「……他に何か隠してない?」  取り繕うように、章が質問の続きをした。 「そうだね。君たちが気になることは、何でも聞いてよ。僕は嘘つかない」  三人の経験上、嘘をつかないという大人ほど信用できないのだが、こと将之に関しては不思議なほど危険アラートが鳴らない。将之の外見に惑わされる三人でもない。やはり、先日の奇妙な連携で生まれた信頼があるのだろう。 「じゃあ、ここに来賓として来たのも偶然?」 「本当は、僕の部下が来るはずだったんだ」 「あ。それってメガネの地味喪女?」  敦が訊くと 「……えー……っと」 『はい』とも『いいえ』とも言えずに、将之は戸惑った。 「文化祭に来てた女?」  章が言い換えると 「あ、そうそう。その彼女」  将之は喜んでそれに飛びついた。 「彼女、文化祭以来この学校を贔屓してるんだ」  その前までは「ヤンキー高、最低。いっつもお菓子のごみは落ちているし埃だらけで校舎は汚いし、男子ばっかでオラついてて怖いし。生徒も生徒なら、教師も教師。生徒を注意できないで、ぼさーっとしているし。あんな学校、仕事じゃなかったら絶対に行かない」と散々罵っていた。  だが文化祭から一変し、「あんな素敵行事できる学校、他に見たことがない」と絶賛している。 「贔屓なのに、なんで喪女は来なかったの?」  当然の質問である。 「それは……んー……。複雑な大人の事情があってね」 「へえ。それも教えてよ」  章が (やっと、この謎の男の尻尾を掴んだ……!)  と表情に出さずに思った。 「君たちが聞いても仕方ないと思うけど。ま、いいか」 (え?! 複雑な大人の事情を教えるの?)  三人が一様に驚いて、顔を見合わせる。  そんな中、将之が一人でペラペラと語り始めた。 「ぶっちゃけ高校の数に対して、教育委員会の人数が足りないんだ。それで一人で複数校を担当しているんだけど、この時期……2月末日か3月1日か2日に卒業式をする所が多い。だから担当校の卒業式が重なった場合は、委員会の誰かが担当校以外も行くよう分担しているんだ」
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加