卒業式の再会 3

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「じゃあ、単純に数字の問題?」 「そう」 「喪女は、よその学校に?」 「そう」  聞かれるままに、素直に首を縦に振って将之は応えた。 「ふうん。でも、それって変じゃない?」  章が気付いたようだ。 「何が?」  と敦が訊くと 「複数校担当でも、贔屓だったらここ(八旗高校)に来そうじゃない? 他の学校を誰かに任せてでも」  章が憶測を語る。 「ふふ……」  将之が、アフリカのだだっ広い草原でシマウマ一頭仕留めたような微笑みを浮かべた。 「その顔、ライオさん……何かしたのか?」  俊也が尋ねた。 「まあ、そこが複雑な大人の事情なんだよ。やり方は僕流なんだけどね」  あまりの暗黒微笑に、さすがの三人も引いた。  どん引きの三人に 「聞きたい?」  と将之が誘い水を向ける。 「え……?」  いつもだったら嫌悪感しかない大人のやり口。  敦達を取り巻く大人は、いつだってそれを隠したがる。将之のように隠さずに、むしろ「聞きたい?」と楽しそうに言われるのは珍しい。 「聞きたい!」  純粋に好奇心だったり、後学のためだったりと思いは様々だったが、三人は将之の話にがっつりと身を乗り出した。 「実はね……」  と将之が嬉しそうに話し出した時だ。 「こらー! 章、敦、俊也ー!」  HRを終え、片付けと帰りのHRをぶっちぎった三人をやっと探し当てた知己が特別教室棟非常口のサッシを開けて、怒鳴り込んだ。 「え……酷い。ここで僕だけ名前読んでもらえない放置ぷr」  将之にすべてを言わせる前に 「悪い大人(こいつ)の話を聞くんじゃない!」  と、知己が一番手前にいた敦の耳を塞いだ。  手が6本あったら章と俊也の耳も塞いだのだが、生憎と2本しかない。  またもや章・俊也が敦に嫉妬の視線を注ぎ、将之は笑顔を凍り付かせた。きっと、心のメモにガリガリと何か書き加えていると思われる。 「悪い大人……って、教育委員会相手にいう言葉じゃないよな」  一番上の段に座る俊也が言い、 「やっぱり悪い大人なの? 将之さん」  敦は鬱陶しそうに知己の手から逃れて将之に聞いた。 「悪いか悪くないかって言ったら、悪くない方だと思うけど」  苦笑いで答える将之に 「それはお前だけの主観だろ? さっさと仕事に戻れ。こいつらを唆すな」  知己が睨んだ。
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