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「唆されてなどいない。俺達が頼んでライオさんに来てもらった」
敦がむぅっとして言うと、章と俊也もそれに頷いた。
「ん?」
意外な三人の反応に知己が珍妙な声を上げる。
「一体、何の話をしてたんだ? お前ら、妙なことを吹き込まれていないのか?」
困惑しつつ、知己が訊くと
「した話を要約すると、教育委員会の現状」
と俊也。
「は?」
「期間限定で発生する人手不足の実態」
章が端的に答えた。
「何、それ。そんなこと聞いてどうする?」
「特に、どうもしないな」
今度は敦が言うと、
「別に隠すことでもないので、喋っちゃいました」
将之が言う。
「???」
4人の言う事がさっぱり意味が分からずに、知己は戸惑った。
「先輩がこの子達を心配して守るのもいいけど、あんまり過保護にするのもどうかと思いますよ」
将之が更に言う。
「この子達も4月から3年生。大人から守ってもらうだけじゃ、困るのは本人です。いい人悪い人の判断を他人任せでなく、自分で判断する力もそろそろ身に付けないと、ね」
「わあ。ここで初めて、教育委員会らしいこと言った」
章が楽しそうに突っ込んだ。
将之は章のツッコミに笑顔で応えると
「今にもバーサクしそうな先輩が来ちゃったし、そろそろ僕も帰らなきゃいけない時間だから、この話はここまで。
じゃあね」
知己達に手を振ると、元来た道をたどるように管理棟に向かって歩き出した。
「……なんだよ。ムカつくな」
知己がポソリと言うと、俊也は自分達のことを言われたのかと焦った。
「あ、あの、先生。片付けとHR、ぶっちぎってごめんな。どうしてもライオさんと話をしたくて……」
「もう、いい。式もHRも終わって、他の生徒は帰っている。お前らも帰れ」
ぼそぼそと知己が言うと、敦が変に気を回して
「ライオさん、苛めるなよ」
と言った。続いて、俊也が
「これ以上バーサクすんなよ」
と付け加えた。
「うるさいな。お前らは寄り道せずに帰れよ。また、明日」
知己が暗い顔して、それでも三人に手を振ると
「なんか『20時だよ!全員集合』みたーい」
と章が爆笑して突っ込んでいた。
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