卒業式の再会 4

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「ところがですね、後藤のヤツ、変な勘繰りを入れてきたんですよ。 『中位先輩が、平野先生に会いたがらないなんて絶対に変です。何かありますね』  と言い張って、結局、くじ通りに僕が行くことになったんです」  こういう時、普段の行いがものを言う。 (……こいつ。後輩との人間関係、どうなっているんだ?)  外見だけはいい将之をすこぶる残念に思った。  部屋着の薄手のシャツに着替え、大き目のカーディガンを羽織つつ将之が知己の所にやってきた。  袖の部分をまくりながら 「章君たち……僕の予想に反して、かなり早い時間に来てましたね」  と言った。 「あいつらが見に行ってたのも知ってたのか?」  章達が東階段で覗いていたのにも将之は気付いて、知らないふりをしていたらしい。 「あの子達、かなりなんですね。式が始まる前に抜け出すなんて。びっくりしました」 「それで俺も手を焼いている」  何を言っても聞き流す。それどころかトンデモナイ行動に出てしまうのは、三人でいる強みなのだろうと思われた。 (門脇の時でさえ、こんなに苦労しなかったぞ……)  去年が偲ばれた。 「とりあえず、彼らに聞かれたことは包み隠さず話したけど」 「それが問題だろ。少しは、隠せ」  体育館の片付け中に消え、帰りのHRにも居なかった。  おおかた特別教室棟だろうと思って探しに行ったが、仲良く(?)4人で喋っている姿を見て、 (また余計なこと吹き込んで……!) と、大慌てで知己は乗り込んだのだ。 「でもあの子達の場合、隠した方が怪しまれますよ」  確かにそうかもしれない。  一年生の時に起こった前任者理科教師とのいざこざで、すっかり教師不信の大人不信になっている彼らに、下手なごまかしは火に油を注ぐようなもんだ。 (こいつのこういう所が、あいつらが妙に懐くとこかな?) 「とりま、僕からは何も暴露してませんから」 「暴露、言うな」 「本当。今回は余計なこと言ってません」 (今回は?) 「余計なこと言う前に先輩が来ましたので」 (……こいつ、なんか言う気満々だったんじゃないか?)  どこまで本気か分からない将之に 「マジでやめてくれ。これ以上、あいつら相手に面倒ごとは勘弁だぞ」  知己が言う。
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