4月はもう目の前 1

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(だけど、これってさ、多分……)  ミルクインのコーヒーに労りの気持ちだけではないものも感じていた。  向かいに座る家永が微妙に片方の口角を上げ、にっと意地悪そうに笑っていたからだ。 「いや、見事な進路指導で」  家永晃一が准教授を務める慶秀大学は、難関大学で有名だった。 (嫌味だ)  そこにクラスから4人も合格者を出したとあって、知己は同僚たちからその手腕を褒め称えられた。 (全然、嬉しくない……)  メンバーがメンバーである。  成績は優秀だが、とにかく問題児で教師泣かせだった門脇蓮をはじめとする4人。いずれ劣らぬ「性格に難あり」なメンバーだ。 (我がクラスのトラブルメーカーが4人揃って家永のもとに行くのか……)  多分、家永はそれを分かっている。  他の三人も一度面識はあるが、少なくとも門脇の性格は既に絡まれたことがあるので、熟知している。  それで、コーヒー大好きブラック派の知己にミルク入りを差し出したのだろう。 「……すまんな、家永。迷惑かける」  溜息交じりに謝ると 「まだ、迷惑かけると決まったわけじゃない。それにお前の所為じゃない」  言いながら、家永は知己のコーヒーに更にもう一つミルクを足した。 「あの……? 家永……?」 「気にするな。お前の胃を心配しているだけだ」 「……絶対に違うだろ?」 「まあ、何かあったらお前を呼び出すまで、さ」 「俺、呼び出されるのか……」  卒業させても尚、門脇達とは縁が切れそうにない。  知己はそう、思った。
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