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(見張り……?)
不思議なことを言う。
見張られるというのは、犯罪者や敗国の兵など多少なりとも立場が上のものが下のものを管理する時に使う言葉ではないだろうか。
果たして、須々木俊也と吹山章はそんな関係か?
むしろ、章の方が強い立場にいるというのは人間関係に鈍い知己でも分かった。
不思議と言えば。
例の教師のメンタル削るゲームに章は参加していないようだった。
みなが同じ嫌がらせの行動を取る中、我関せず、窓際の席でぼんやり外を眺めている。
ゲームに参加しないからと言って苛められるというのも違うようだ。そんな立場だと一番嫌々ながらにゲームに参加させられる。
誰の指図も受けない章の態度に、誰の指図も受けなくても許される立場を感じさせた。
「章……、あれ、やめさせられないか?」
一縷の期待を持って知己が言ってみた。
『あれ』の指すことに、章も俊也も心当たりが大ありだ。即座に二人して、知己の顔を見つめる。
「僕には無理だよ。答えは自分で見つけなくちゃ、ね」
ふふんと意味ありげに章が笑い、俊也は怪訝で無言だった。
(そういえば、クロードも似たようなことを言っていたな)
と思い出す。
(見張りがいるから、これ以上は教えてもらえない……か)
俊也が当然のように聞き耳を立てている。
俊也はしっかりとあのゲームにも参加している。つまりは、ゲーム主催側。もっと面倒なことになりかねない。
(あれ? もしかして……)
章の冷たい反応は、知己を守るためかもしれない。
(いや、まさか……な)
とは言え、いくら考えても知己には分からない。
家永に相談したが「分からない」と言っていた。聡明な家永だが、こういう意地悪いことは発想自体がない。と、なるとこういうのが得意そうな将之に相談するのが良いのだろうが、その後が怖い。門脇でも同じだ。殴りこんでくるのが関の山。
(自分自身で、解くしかないのか……)
既にかなりメンタルに来ている。
目の前が暗くなる思いだ。
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