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「……どう、思う? 章」
準備室に消えた知己を、俊也が怪しんだ。
「蓮様効果じゃない?」
「蓮様効果?」
「元々僕らにお菓子を用意してないって言ったからね。窮地を救ってくれた蓮様に、感謝したくなったんじゃない? 僕らはついでだよ」
それを聞いて門脇が
「お前ら、善行重ねる俺様に感謝しろよ」
ふふんと鼻を鳴らして言う。
それに俊也も章も素直に
「蓮様、ありがとー!」
と頷いてみせたが
(でも……。
蓮様は「先生の恋人だ」って言ってた割に、先生からの扱いは雑なんだよね。そもそも付き合っているのに蓮様にお返しを用意してないのも変だよね? 本当に恋人だったら、こんなとこで会わずにどっかでデートでもしてホワイトデーのプレゼントをもらうのが普通じゃないかな?)
と章は思った。
だが、門脇の射程距離内だったので口にはしなかった。
「どんな菓子かな? 意味は何だろ」
妙に期待している俊也に
「お菓子に関してはあまり期待しない方がいいと思うな。例えばー……いつ、誰からもらったかも分からないような鞄の底に眠っているのを僕らに……とか?」
恐ろしいほど章が見抜いていた。
「酷い扱いだな。それって、食えるもんか?」
「食べられなくても関係ないよ」
「なんでだよ?」
「僕は飾るから」
平然と章は答えた。
「なるほど。俺もそうしようかな。先生が俺にくれたもんなら、家宝みたいなもんだ」
なんとも不毛な会話に、敦は
(あの悪徳教師に軽くあしらわれているのに、それでもいいのか? お前らの方こそ、どエムに目覚めているぞ)
とツッコむ気力もなく、呆れて聞いていた。
敦と同じく、呆れた門脇が
「馬鹿だな、お前ら」
と言う。
「どうせ、僕らは馬鹿ですよ。蓮様みたいに賢くないですから」
「そう卑屈になんなって。いいこと教えてやるから。こういうチャンスは最大限に利用するもんだ」
門脇がニヤリと笑った。それに
「「何かあるんですか?」」
章と俊也が、もれなく食いついた。
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