二度目の春

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 放課後には、いつものメンバーが理科室に集まった。 「あんなに成績悪いのに、どうして俺が『大学進学コース』の3組なんだって思ってんだろ?」  いつもの一番日当たりのいい席に三人集まると、さらっと俊也が切り出した。 (きっと、こいつらの前世は猫だな)  知己は、日当たりのよい縁側に集まる猫を見ている気分だ。 「章は痩せても枯れても学年1位だし、敦だって実は成績は良い。ネックは出席日数だけだった。だけど、万年成績低空飛行の俺がなんで『進学コース』かって思わなかった?」 (……思った)  こちらもいつも通り。  少し離れた教卓で角が立つので訊きづらいが、勉強嫌いの俊也が何故に進学コースなんだ?とは疑問に思っていた。 「俺だって、本当は勉強なんかしたくないから、卒業した後はすぐに親父の仕事のサポートして仕事覚えようって思ってたんだよ。だけど、梅ノ木グループレストラン部門社長子息が、高卒じゃまずいんだって。大学くらい行っておけって、さ。あーあ、学歴社会やだねー」  ペラペラと俊也が喋る。 「え……、そんな理由か?」 「要は、大学じゃないんだよ。最終学歴がどんだけ三流でもならいいんだよ」  と章が付け加えた。  大学関係者が聞いたら倒れそうな話である。 「僕も別に大学行かなくてもいいと思ってんだけど、母がうるさいからね。とりまの進路先」  教育評論家の母・吹山マヤは、それを条件に八旗高校受験を許したのだと言う。 「本当の目的は、『蓮様』だなんて言えないからねー」 「しかも、うちの学校に居なかったしな」  敦も会話に参加してきた。 「誤算だったなぁ。絶対に八旗の制服だと思ってたんだけど」 「見かけによらず、蓮様、勉強できるヤツだったからな」  門脇が聞いたら、間違いなくぶっ飛ばされる発言だが、どうやら今日は来ないようだ。 「今日も蓮様は来ないの? 先生」 「来ないな。門脇は、おとなしく大学で研究の手伝いをしているぞ」  先ほど家永からのメールで、家永の研究室で忙しく働く門脇の写真が送られてきた。  すっかり家永研究室の学生のようだが、まだ2年生。研究室には在籍していない。
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