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敦のただならぬ気配に
「いや、体っていうのは誇大表現だったけど……。何、その敦ちゃんのテンション」
章さえも引いていた。知己の方は、更なり。
二人の大潮もかくやの引きっぷりに
「……いや、俺も大げさに驚いてすまなかったけど、さ」
敦が気まずそうにする。
「まだピンク脳なのか? 敦」
正面の席の俊也が訊いた。
「うるさいな」
ぼそりと答えた敦に
「それ!」
と突然、章が指さして立ち上がった。
「「どれ?」」
不意のことに、敦と俊也がキョトンとする。
「僕が訊きたいこと……というか訊きたい人! 俊ちゃん・敦ちゃんのオツムをピンク色に染め上げた張本人・将之さんのことだよ!」
(将之のこと……!?)
思いがけない名前が出て、知己がわずかに身じろいだ。
「はあ? もうその話は卒業式の時に済んだはずでは?」
「悪徳教師の高校時代の不遇な後輩。今は教育委員会に勤めている。たまたま重なった卒業式に、担当外だがこの学校に来ることになったと言ってた……何もおかしなところはないと思うが?」
俊也と敦が言い、知己も
(そうだ、そうだ。今更、あいつのことなんか気にするな! というか、俺に聞くな!)
心の中で盛大に敦達を応援していた。
「それが済んでないんだよ。僕、思い出しちゃったんだ」
そう言って章は知己へ視線を移した。
「「何を?」」
もったいぶった言い方だが、気長に俊也達は聞いていた。
「あの人も、教育委員会の人だったんだって」
「んんん?」
章の言いたいことが分からない。
「そりゃ……教師の不純同性交遊の処分に詳しかったから、それで合点行ったんじゃなかったか?」
「違う、違う。その前に、先生が言ったことに結びついちゃったんだ。僕」
「え? 俺?」
何か余計なことを言ったかと、知己は考えてみたが心当たりはない。
「おい。章。俺が、いつ、何を言った?」
「俊ちゃんの赤点回避勉強会の時。僕が『カフェに居た教育委員会の人だよ!』と言ったら、『なんで、知っている?』とめっちゃ慌ててた」
突然、知己の記憶も呼び覚まされた。
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