二度目の春

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「敦、俊也、助けろ!」  絶対に助けてくれなさそうだが、知己は藁にも縋る思いで言ってみた。 「助けてやりたいのはやまやまだが、俺は友人の意思を尊重するタイプなんだ」  もってまわった言い方で敦は断った。言葉と違い、ちっとも残念な素振りはない。日向の心地よさにゴロゴロと机の上に寝そべっている。  俊也に至っては 「俺も助けたいとは思っているんだ。だけど、先生のナニをちょっと見てみたい気もするので助けない」  と本心を包み隠さず言うものだから、知己だけではなく章までも 「何それ。マジ、キモイ」  と震え上がらせる結果となった。  その上、 「先生、自力でガンバレ! 章から貞操を守って! 俺の為に」  さっきと言っていることと真逆に、意味不明な応援まで始めた。 「なんで俊ちゃんの為なの?」  突拍子のない応援に、章が素に戻って訊く。 「今、ヤっちゃうと不純同性交遊になっちゃうじゃねえか。だから俺、卒業したら先生を迎えに来るよ」 「え? うわ、何? 突然の告白?」  やや引き気味の章が 「しかも、かなり蓮様に影響された言い方なのが陳腐」  面白くなさそうに分析まで入れてきた。 「卒業後に来なくていいから、今、助けろ」  それどころではない知己は多分、俊也の告白を未だによく分かっていない。  俊也も俊也で人の話は基本聞いていないので 「だから、それまでは綺麗な体のままでいてほしい……なんてな」  うっとりとカッコイイことでも言ったみたいな顔をしていた。 「……なんかファンタジーな卒業後の夢だが、この間、こいつ、蓮様に軽くちゅー許してたからな。全然綺麗な体なんかじゃねえよ」  すべてにおいて面白くない状況の敦が眉間に皺を寄せて言うと 「うわ、思い出させんな。忘れてたのに」  俊也があっけなく現実に戻ってきた。 「トリアタマめ」 「俊ちゃんは、高3なのにいまだに高2病。夢見る男子だもんね」 「おい、どさくさに紛れて俺をディスるな」  俊也達との会話で章の気が逸れた。  その隙を見逃さずに、知己は章に掴まっていた狭い教卓とホワイトボードの間を後方に下がって、なんとか抜け出すことができた。 (なんだかんだで、やはり俊也GJ(グッジョブ))  心の中で大絶賛していた。
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