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それで章が
「あーあ、ダメだなぁ、俊ちゃん。ばらしちゃ」
追い打ちをかける。
「はぁ? 俺ぇ!?」
今度は俊也が驚き、声が裏返った。
「俊ちゃんがわざわざ言うから、『当たりを引いたらいい』ってバレちゃったじゃない」
「俺か?!」
「いい? 巡り悪い平野先生だよ。俊ちゃんが『ネタバレ』って言わなきゃ絶対に分かんないのに」
「お、俺の所為かー?!」
グレーだった章の言葉をクロと確定したのは、俊也の言動。
「……そういう事になるよねぇ」
残念そうに言いながら微塵もそうとは思ってなさそうな章は、よいしょっと掛け声をかけてコンテナを教師机に置いた。俊也に背を向けた状態で、知己にウィンクを送った。当然、背後の俊也には気付かれてない。
もっとも、俊也の方はそれどころではなさそうだ。
「お、俺が教えちゃったことになるのか……?」
オドオドとして顔も青ざめている。知己たちの様子にまで気を配れないようだ。
(あ。今の……もしかして、ヒントか!)
俊也はこの経緯を喋れない。
喋ったら、俊也が「当たりを引けばいい」とヒントを出したことを露呈してしまう。
(当たりを引く……)
章の言葉が頭の中で響く。
(そして「指名はしちゃダメ」)
(……つまり、当たりの「誰か」を指名しろ……ということなのか。それで、このくだらないゲームが終わるのか)
とはいえ、やっとこの意地悪な授業妨害ゲームのルールが分かった段階。
肝心の「誰か」には、まったくあてがない。
「まあ、よーく考えてみたら?」
章は明るく、そう言った。
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