入学式の来賓は 1

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「本当に章の精神年齢は、いくつか分からないな。あいつが好きなのは80年代のDVDだぞ」  スーツとワイシャツにネクタイ、それに礼のネクタイピンを添える。 「あの見た目で、実は中身60代ですか?」 「80年代のすごく努力しているCGが好きなんだと。だからあいつの話、時々昭和の香りがするんだ」 「その割に、やることは小学生。なんとも精神年齢不詳な子ですね」  将之は感心したように言った。 「あ。精神年齢で思い出した。敦が今、中学生男子みたいになんでも卑猥な方向に言葉を変換して大変なことになってるぞ」 「清純派アイドル・メガネっ子敦君が、なぜそんなことに?」 「ぶっちゃけ、お前の所為だ」 「え? 僕?」  将之が驚いて、自分を指さした。 「お前、良からぬ言葉ばっかり教えただろ?」 「失礼な。教えてませんよ」  頑として将之は言い張った。  あまりに強気な発言に「あれ? 違ったか?」と一瞬、知己は怯んだ。 「教えていませんよ、そんなに」  言い換えた将之に (やっぱり教えているじゃねえか)  と知己は思った。 「僕が教えたのは、俊也君にです。敦君は、既に仕入れてました」 (だから、やっぱり教えているじゃねえか)  心の中で知己は二度目の突っ込みを入れた。 「それ、ダメだ。同罪だっつーの。俊也に教えたから、一緒に聞いてた敦が、なんでもそっち方面で考えてしまうようになっているんじゃねーか」 「具体的に言うと?」 「エッチなこと想像して、真っ赤になってどもっている」 「それは可愛いですね」  将之に反省の色はない。 (……なんか、ムカつく) 「で、先輩の本命は誰なんですか?」  突拍子のない将之の話に、知己が「はあ?」と聞き返した。 「精神年齢不詳でおしゃべりで先輩にかまちょな章君。えっちな言葉に過敏に可愛く反応するツンデレ敦君。ちょっとボケているけど天然要素が捨てがたい行動派の俊也君。  誰が一番好きなんですか?」  人は時に表情と全く違う感情を抱いていると知己は思った。  今が正にそう。  将之はにっこりと微笑みながら、内心イライラ……いやグラグラと煮えたぎっているようだ。 (ジェラ期、終わったと思っていたが)  傍に居られない不安からか、メンドクサイ期をまたもや迎えている。 「誰が一番好きなんですか?」  しつこく、笑顔で訊いてきた。 「ああ、もう! そんなの決まっているだろ?」  めんどくさそうに、知己が答えた。
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