ゲーム 開始 3

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ゲーム 開始 3

 その日からというもの、知己はどんな嫌がらせにもめげずに当てて当てて当てまくった。  「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」というが、1学年3クラス。それが3学年で9クラス。およそ300人近い生徒達の中の一人を当てるというのは、至難の業である。  本当だったら、心折れそうな嫌がらせの数々だったが、生徒を指名することで分かることがあるのなら……と知己はめげなかった。  せっかくの章がくれたヒント。  なんとかモノにしたい。  誰もあてにできないので、知己は章がいうように自分自身でよく考えてみるしかない。 (よく考えたら、すごいことだなー)  教師嫌いで、生徒たちが一致団結しているのだろうが、1年生から3年生までが足並み揃えて授業妨害ゲーム。 (それだけ勉強したくないということなのかな?)  授業を真面目に聞くよりも授業妨害ゲームする方が楽しいという結論なんだろうな……と知己は思った。 「知己ー!」 「あ、クロード」 「昼食、一緒に食べましょう!」  ここにゲームクリアした英語教師・クロードが居る。  章のようにヒントをもらったわけでもないのに、なぜ分かったのだろう。 (聞いたところで教えてくれないけど)  言ってみれば、クロードも知己のこの状況を楽しんでいるのだ。  クロードは誰に見張られているわけでもないのだから。  学校の向かいのコンビニに出かけたり学食に行ったりするので職員室のデスクは歯抜け状態だった。ありがたいことに、職員室で弁当を食べると、卿子がお茶を入れて、職員室に残っている者に配ってくれる。そんな業務は彼女にないのに、ボランティア精神でしてくれるのだ。 「前の学校からの習慣で……つい」  謙虚に卿子は言うが、そんな卿子に恋心抱くものがいるかもしれないと、知己は密かに危惧していた。だが、この学校の職員は大抵既婚者のおじちゃんおばちゃんの年配の先生ばかり。その心配はなさそうだ。  若くて情熱に燃えている教師は、あのゲームに耐えられず、早々に異動希望を出すか、やめて郷里に戻るか、転職して一般企業に就く。学校に残るは、生徒への指名を諦めて、割り切って喋るだけの授業を繰り返しても平気な、教師の情熱を忘れてしまった出がらしのような教員のみだった。  そんなやる気のない教師の、大学の講義のような一方通行授業で学力が付くわけがない。だが、留年生を出すのも面倒なので、定期テストは中学生レベルの簡単な問題にして事なきを得ていた。
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