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「意外に真面目で地味な喪女も、意地悪な感じだったね。あれじゃ、どっちが英担の言ってた『意地悪Master』だか分かんなくなっちゃったね。でも、ま、先生のリアクションからいったら将之さんだろうけど」
小声で話しながら章が体育館の席に着く。隣のパイプ椅子に敦が
「そうだな……」
と短く答え、面白くなさそうに顔を俯かせながら同じように座った。
「敦ちゃん。まだ、ご機嫌斜め?」
と章は話しかけたが、敦はムスっとしていてそれには答えなかった。
やっと八旗高校の入学式が始まり、それは滞りなく進んでいった。
校長の祝辞が終わって、いよいよ教育委員会の祝辞になった。
(ここよ! クールでビューティに決めるのよ、私!)
キビキビとした動きで、一礼した後に前田が壇上に上がる。
(髪はちょっと気になるけど……やっぱりかっこよく決まったら、後でラノさんと写真撮ってもらおう!)
勝手に自分へのご褒美を決めて、キリっと顔を上げた。
深呼吸をして、一旦視線を職員席に向ける。
(ああん、ラノさん。やっぱり綺麗! ふつくしーぃ!)
ひラノを確認すると、前方の新入生その奥の保護者や敦達在校生がいる正面に視線を移した。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」
浪々と教育委員会の挨拶を述べ始めた。
祝辞は紙に書かれたものを読むだけだ。仕事熱心な前田は全て暗記していた。一言一句、頭の中に入っていて間違えようもない。そこで前田は台に置かれた紙に視線を落とさずに、つらつらと感情込めて読み上げる。まるで舞台女優の読み聞かせシーンを彷彿させた。
(かっこいい私を見ていてくださいね、ラノさーん!)
陶酔した前田のスピーチは最高潮を迎えた。
だが、突如、生徒席のガタンという激しい物音で、女優のように語る前田の祝いの言葉は遮られた。
(何事ぉ?!)
音のした方を見ると、章の隣の敦が床に倒れている。
「敦! 大丈夫か?!」
学級委員の俊也は3年3組の一番前の席に座っていたが、すぐさま、後ろを振り向いて大声で尋ねた。
職員席にいた知己も、すぐに駆け寄るのが見えた。
(え? ツッシー君なの!? どうしたの? 大丈夫かしら?)
前田は祝辞を一旦止め、固唾を飲んで様子を見守った。
「わ! 敦ちゃん、熱があるよ!」
章が敦の体に触れて、駆け寄った知己に知らせる。
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