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入学式の来賓は 4
「いや、すみません。とんだハプニングでして」
来賓控室の校長室に戻ると、すぐさま校長が謝ってきた。
「いいえ。こちらこそ驚いてしまって、祝辞を中断させてしまい。大変申し訳ございません」
ぺこりと前田も頭を下げた。
言葉とは裏腹に
(まさか、ラノさんとツッシー君のお姫様抱っこ見られるなんて……。うふ、うふ、うふふのふー)
気を緩めると、顔がにやけそうになる。
それで前田はキリっと度合いを強めて言うと、あまり申し訳なさそうにない言葉に聞こえた。ついでにメガネのフレームがきらりと光り、校長は(もしかして病人出した不手際に祝辞を中断させたことを怒っている?!)と怯えた。
前田とは初対面ではない。
昨年から夏の視察に文化祭、色々とやってきては「ずさんな帳簿ですこと」「これだから八旗高校は」「驚きの文化祭でした」と酷評ばかりいただいている校長は、また何か言われるのでは……と、かなり前田を恐れていた。
「にゅ、入学式に関して、特に保護者や生徒からのクレームはなさそうです。それに、あれはいた仕方なかったことかと……」
必死でフォローする校長だったが、表情を変えない前田は
(当然でしょ、私のやり方に何か?)
みたいな冷徹に見える。
実際はにやけるのを必死で誤魔化していただけだが、やはり硬い面持ちで
「そう言っていただけて、何よりです」
謙遜しているようだが、ちっともそうは感じられない言い方でキリっと答えた。
「所で倒れた彼は、大丈夫だったのでしょうか?」
(ラノさんにお姫様抱っこで連れてかれたツッシー君、どうなったのかしらぁ? うふふのふー)
心配よりも興味が勝って、だが、それを悟られぬよう敦の容態を聞いた。
「どうも熱があるのに、それを隠して式に参加していたようで。今、保健室で休ませています。大事には至ってないようです」
「そうですか。良かった。それで先生の方は?」
(実は、それが一番聞きたかったのよね。ラノさんは、大丈夫かしら?)
それとなく付け足して聞いた。
「少し落ち込んでいるようです。生徒の体調不良に気付けなかった、と」
「そう……ですか」
これはとても「今日の再会の記念に、一緒に写真を」などと言い出せる雰囲気ではない。
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