入学式の来賓は 5

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入学式の来賓は 5

 HRを終え生徒は下校となった時刻に、章と俊也が保健室にやってきた。 「先生。敦ちゃん、どんな感じ?」  すやすやと気持ちよさそうに寝る敦のベッド脇には知己だけが居た。 「敦はしっかりしているな。本人が普段から持ち歩いている解熱剤の頓服飲んで、今は寝ている」  敦は、だいぶ減ったものの急な体調の変化がある。普段からこうなることを予想して、薬を持ち歩いていた。 「しっかりしているというか、急な発熱に慣れているって感じかな。って、あれ? 保健の先生はいないの?」  幼馴染ならではの発言の後に章がぐるりと室内を見まわしたが、知己と敦の二人だけで、他に人が居る気配がなかった。 「済ませたい仕事があるって職員室に戻ったぞ。俺も寝ている敦に二人もついている必要ないし、『俺が居るからごゆっくり』って言ったから。そのうち戻ってくるんじゃないか?」  今日は入学式だったから、新入生関係で何か保健の仕事があるのかもしれない。  知己はそれに専念してもらうように言った。 「なあ、先生。俺がみんなを教室に連れて行って、副担がHRしたんだぜ」  俊也が学級委員の仕事を全うしたことを嬉しそうに知己に報告した。 「そうか、ありがとう。助かったよ、俊也」  意外にも俊也の学級委員はハマり役のようで、俊也の鋭い視線に睨まれると八旗高校生は、いつもの「たりぃ」「めんどっちぃ」の常套句を封印し、すごすごと従う。  敦の制服の襟元を緩めて脇に挿していた体温計がピピピと電子音で終わりを告げた。  ぐっすり眠っている敦は、まったく気付かずに穏やかな寝息立ててる。 「それで先生が熱を測ってたんだ。熱は?」  章が訊く。 「薬のおかげで下がったみたいだ。今は36.8」 「この状況、敦ちゃんが目を覚ましたら、また唸って、熱出しそうだね」 「ん? そうか?」  知己は軽く聞き流した。 「家の者に連絡したから、そのうち迎えが来るだろう」 「敦。大したことなさそうで、良かったな」  と俊也が言い、「そうだな」と知己はわずかに笑みをもらした。
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