入学式の来賓は 5

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「ねえ、それまで敦ちゃん、寝せておくの?」 「当然だろ? 起こす必要がない」  不思議そうに知己が言うと 「ねえ、ねえ。そしたら先生、敦ちゃんが起きるまでは暇だよね?」  何かを期待して、章が言う。 「なんだ、一体?」  嫌な予感しかしない。 「待っている間に、僕にもお姫様抱っこして欲しいな」  上目遣いで言い出した。 「なんでだよ。気持ち悪いな。……しないぞ」 「だったら俺もしてほしい」  どさくさに紛れて、俊也が言う。 「無理だ」 「じゃあ、する方でいいから」  俊也は知己を姫抱っこしたいらしい。 「はあ?」  二人の言う事がまったく理解できずに知己が顔を顰めた。 「悪い冗談は、やめてくれ」 「いいよね、敦ちゃん。お姫様抱っこされて。意識あったら絶対に死んでもしたがらなかっただろうけど、僕らにとっては羨ましい限りだったなぁ」 「敦は軽かったから、できたんだ。お前ら、デカイから無理」 「それを敦ちゃんが聞いたら憤死しちゃうね。小さいの気にしてるから」 「今、寝ていてマジで良かったな」 (こいつら本当に友達か?)  寝ている敦を前に姫抱っこをせがむ友人・章(されたい人)と俊也(したい人)。 「……それに、あれは俺の所為だ」  知己はベッドわきのパイプ椅子にもう一度座り直した。 「違うでしょ? なんで先生の所為? 敦ちゃんが黙ってたのが悪いんでしょ?」 「いや。俺が体育館に入る前に、敦の容態のおかしさに気付けばよかったんだ」 「それ、結果論だよ。こういう時に普段の行いがものを言うと思わない? 卒業式だって寒いのなんのとごねてたし、あんだけ強がってたら元気だと思うよ。顔色だって分からないくらいの分厚いメガネに俯き加減。一緒にいた僕だって分からなかったんだから」  常に一緒にいる幼馴染の章でも気付けなかったのだ。知己が分からないのも無理はない。 「……敦に触ってみたら分かったかも」 「敦ちゃんが触らせるわけないよ。敦ちゃんは、博物館の展示物並みに触れそうで触らせないのだ」 (その例え、よく分からないな)  と、知己が思っていると 「それで言ったら、先生、天才だな。敦の頭撫でてハグして手を繋いで耳塞いで姫抱っこした」  俊也がトンデモナイことを言い出した。 「やめてくれ。俺が敦に触りまくった変質者みたいな言い方は」 「事実を列挙したら、先生が変質者になっちゃったね」  章が冷静なツッコミをした。
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