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(オネショタって『お姉さんとショタ』ってことだろ。きっと前田君のことだから、ラノさんがお姉さん。でショタが、そのツッシー君だよな? あの学校で『美少年』と言えば……、卒業式で見た感じだと章君か敦君だと思う。後は、むくつけき男子ばっかだったし。もしも入学式で誰か倒れても、先輩がすぐに駆け付けるとは考えにくいな。きっと先輩が行くよりも先に他の先生が行くだろうし。……あの人、30歳のくせに未だ人見知りやってるし)
章か敦かで言ったら、かつげるのは身長が小さな敦の方だろう。
(それから『百合カプ』と言ってたから。百合って女性同士ってことだろ? 美少女顔は敦君だし)
「……もしかして、敦君か?」
将之にそう言われて、ひラノと共に居た毒舌美少年司会者の章が「敦ちゃん」と呼んでいたのを思い出した。
「そう、ソレ! まさに『天使がおる! ここが天国かー!」って感じでした。ヴァルハラっ!」
と前田が正解を告げた。すると
「んー? ヴァルハラに天使は居ないんじゃないか?」
後藤が余計なツッコミを入れて、「うるさいわね!」と前田にまた睨まれる羽目になった。
「……そう……か」
将之は半ば呆れて、眉間に手を当て、ゆっくりと目を伏せた。
(……先輩め。また敦君だけを贔屓して……。知らないぞ、章君達にどんな目に遭わされても)
既に酷い目に遭わされた後とは思いもよらない。
(仕方ない。先輩には今夜も僕の知りうるすべての手段を尽くして「えこ贔屓ダメ! 絶対!」をお教えしなくては)
無駄に正義を振りかざしていた。
「あれ? そのネクタイピン、ハヤリですか?」
と前田が言うまでは。
「え?!」
「確か……、ラノさんと一緒ですよね。その四つ葉モチーフのネクタイピン」
遠目で前田は自信なかったが、体育館前のすったもんだの時に見かけたひラノも同じネクタイピンを付けていた。
(……しまった!)
前田がここまで目敏かったとは。
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