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「あ……うん。もしかしたら、これって流行なのかなー……。えっとね、店に行ったら、やたらとこの手のものが売ってたよ。いやぁ、嬉しいな。ラノさんと一緒だったか、これ」
歯切れ悪く将之が言うと
「うぎぎぎ……。なんだか、めちゃ悔しい。ラノさんと同じもの、私も買いたい。それを売ってたお店、教えてください」
前田は食い下がった。
「……どこのお店だったかなぁ。この近くのモールで買ったかも」
当然、嘘である。
「どこ? どの店? そこんとこkwsk!」
「ごめん。だいぶ前のことだし、忘れちゃったよー」
将之が笑顔で誤魔化していると
「白々しい……」
くるりと回転椅子ごと体の向きを変えて、後藤がぼそりと呟いた。
「ああん? 何を?!」
後藤に対して、前田は鬼の形相で答えた。
「あれ? もしかして前田は知らないの?」
「だから、何をってば!」
「二人がさっきから言っているラノさんって、平野先生のことでしょ? 中位先輩の同居人じゃない」
「はああああ?! 同居人?」
さらりと衝撃的発言だった。
(中位さん、ラノさんを『知人』って言ってたけど、まさか同居されてたとは……!)
前田の目が光る。
「中位先輩が、平野先生とお揃いのものを持ってるっていうのを知らないわけないよ。どーせ、一緒に買ったんでしょ? 仲良しだからなぁ」
(後藤……許さん)
今度は将之が睨んだ。
「え? あれ? 僕、なんかまずいこと言いました?」
「まっじ。中位さん、それ、早く言ってくださいよー! ってか、後藤ももっと早くに教えて!」
結局、何をしても怒られる後藤である。
「二人でいっつもひラノさんの話しているから、てっきり知っているものとばかり思ってたんだけど……」
後藤が何やらモゴモゴと言っているが、もはやそんなことはどうでもいい。
前田が改めて将之の方を向き
「もう、なんで教えてくれなかったんですか?」
と詰め寄った。
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