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「僕んちの部屋が余っているから、お貸ししているだけだよ」
と将之が言う間にも、前田の思考はフル回転していた。
(中位さんが、こんなに仲良しのラノラー仲間にも同居人のことを言わない理由って何?)
前田は、自分のことを中位将之の仲良しと信じて疑わない。
(あ、そっか。優しく素晴らしいお人柄の中位さんのことだもの。後藤と違って、「自慢よくない、かっこ悪い」とか思って自粛してたのね。さすがだわ、中位さん)
前田は、中位将之のことを聖人君子の権化だと思っている。
(それか人に言えないやんごとない理由があって……かも。もしかして、腹違いの兄弟とか生き別れの兄弟とか全然似てない兄弟とか……そういうことか!)
前田は、なぜか「兄弟」縛りでしか発想できない残念思考回路の持ち主だった。
「いいなぁ、生ラノさん見放題。同居だったら当然スーツ姿はもちろん部屋着とか下着姿とか見れちゃうんでしょ?」
(下着姿というか、その中身まで見てるけど、ね)
心の中で優越感に浸る将之だったが
「もう、それはうふふ、うふふ、うふふのふー! ……というよりも、げっげげっげげっげ」
手の甲で出てもいない涎を拭く仕草をする前田に
「前田君、その笑い方はもう完全に自分を見失っているよ」
かなり引き気味に突っ込んだ。
前田千寿の最終形態・下種オタクに進化した瞬間であった。
さすがの後藤も、前田の豹変っぷりに引きつつ
「……前田は、平野先生の下着姿見たいのか?」
と尋ねてきた。
それに対し、前田から
「下着とまではいかないけど、おうちでの無防備な姿ってそそられません? でへへ」
同意を求められて後藤は
(今度、平賀朋※のAV鑑賞会に誘ってあげようかな?)
と血迷っていた。
「……はー……」
前田の前で、うつむき溜息吐く将之の眉間にはくっきりと皺が三本入っていた。
※平賀朋・・・微乳堕天使の異名をもつ平野知己そっくりなAV女優。「続」「後」編で登場しました。後藤を始め、門脇、菊池、家永(?)など熱いファンがいる。
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