俊也の学習の成果 1

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俊也の学習の成果 1

「前田君から聞きましたよ、先輩。また敦君をえこ贔屓したそうですね」  家に帰ってくるなり、将之が言った。 (……やっぱりな)  一足先に帰りついていた知己は、部屋着の黒パーカーとそれと揃いの黒いスウェットズボンに着替えていた。  残念ながら前田切望の赤白縞々(ボーダー)ではない。 (あの来賓の教育委員会の女性が将之に喋らないわけがないよな)  そうでなくても将之と前田は、仲良さげにカフェで喋っていた。  八旗高校であったことを喋らないわけがない。 (……あ。考えたら色んな意味でムカついてきた)  知己には卿子のことや敦のことなど色々と難癖付けるくせに、自分は「ラノラー仲間です」と妙齢の女性と親しくする。  狡いんじゃないかと思う。  最悪な目覚めを迎えた敦は、薬が効いてたっぷり寝て、かなりスッキリした顔をしていた。 「敦ちゃん、夜更かしした?」  ベッドから降りながら章が訊く。 「うるさいな」 「季節の変わり目は大体風邪ひきやすいくせに。すぐに熱出すくせに」 「うるさいな」  章の言う通り、大体4月は休みがちである。  ついでに言うと梅雨の時期も弱く、9月も出席率が悪い。  昨年は文化祭後の12月1月の冬場も頑張ってきてたが、その前の1年生の時はがっつり休んでいた。 (長期休みの後は学校来たくない……ってパターンだと思ってた)  典型的不登校の行動パターンだったが、敦はそのついでに季節の変わり目の体調の整わなさに問題があった。 「どーせお風呂上がりにドライヤーもろくにかけずに頭濡れたまんま、アマプラ(※1)観すぎて夜更かしして、朝寝坊してご飯食べずに学校来たんじゃない?」 「……ぅ」  章が敦の昨夜の行動の全てを言い当てたのだろう。なんとかの一つ覚えで「うるさい」としか言わなかった敦が、とうとう何も言い返せずに口を閉ざした。  生活の不摂生も祟っているようだ。熱を出すのも必然だ。 (章……千里眼か? それとも隣から敦の生活を逐一覗いているのか?)  と知己が思うほど言い当てる章の傍ら、俊也が 「敦は何でプレイしてんだ? ちなみに俺はヒカチュー」  と会話に参加してきたので、章が 「それはスマブラ(※2)!」  とツッコミ、ついでに 「相変わらず俊ちゃんは顔に似合わず可愛い物が好きなんだね」  余計な一言の追い打ちを入れた。  そんな話をしていると 「梅木君、お迎えが来たよ」  と養護教諭が呼びに来た。 ※1 アマプラ:アマゾン〇ライムのこと。章が「80年代90年代のCGが好き」と言ったのを真に受けて、敦も観た模様。 ※2 スマブラ:スマッシュ〇ラザーズのこと。対戦型バトルゲーム。
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