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★俊也の学習の成果 2
「俊也が背後から俺を掴んで、こういうポーズを取らせたんだ。そして、章がこの上に飛び込んだ」
一人で「小さく前にならえ」的なポーズを取って、知己が神妙な顔で言う。
何やら滑稽なポーズではあったが、将之は真剣に
「章君、やるな!」
と章の強引な実力行使を高く評価した。
「いや、褒める所じゃない。それで俺達三人はベッドに雪崩れ込んで、敦が目を覚ます事態になったんだから」
「……激おこの敦君が目に浮かぶようです」
具合悪い自分の横で知己を含めた三人が、きゃっきゃきゃっきゃと姫抱っこだとふざけていたのだ。
「もちろん、激怒してた」
「分かりますよ……。あ、僕、章君の役、やっていいですか?」
「やめろ。俺の両腕を折る気か?」
章でさえ抱えられなかったのだ。更に大きくてゴツい将之なんて無理に決まっている。
「じゃあ、俊也君の役でいいや」
そう言うと、将之は知己の背後に回った。
「こうですか?」
知己の背後にぴったりくっついて、腕を前に回す。
「なんで腹に腕回してんだ」
背後からタックル抱きのポーズになり、知己が将之の腕を掴む。
「あ、すみません。つい」
「お前の手で俺の手首を掴むんだ」
「こうかな?」
まさにあの時と同じ姿勢になった。
将之の方が背が高いので、知己の左肩辺りに顔を乗せるようなポーズにはなったが。
「む! ……これは」
将之が何かに気付いたようだ。
「なんだよ」
「やばい、何、これ。すごくいい匂いがします。先輩、香水付けてる?」
俊也も似たようなことを言っていた気がする。
「つけるか。シャンプーの匂いだろ。ってか、あんま耳元で喋るな」
将之に背後から掴まれ耳元で喋られると、ゾクゾクとした感覚が生まれて知己の背筋を這いあがるかのような感覚が生まれた。
俊也の時はゾワゾワだったが、似たような感覚でずいぶんな違いだ。
「こっちもいい匂い……」
身を屈めて体躯の方にも顔を押し付ける。薄手のトレーナーが、嗅ぎまわる将之の鼻の位置や唇の位置を如実に伝えてきた。
「やめろ。それもボディソープだろ? もれなくお前とお揃いの匂いだ」
一緒に住んでいるのだから、もちろん将之も同じものを使っている。
(何を今更……)
と思っていると、将之が肩口に頭を戻してきた。
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