ゲーム 開始 4

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ゲーム 開始 4

 どんなに嫌がらせを受けてもめげずに授業してきた甲斐あって、少しだけ法則が見えてきた。 (微妙な……ズレがある?)  3年2組の授業の時だった。  知己が懲りずに指名したとき、相も変わらず一斉嫌がらせの筆箱落とし。筆箱の素材はビニール、金属、布……色々あれど中身は似たり寄ったりで、ガシャガシャガシャガシャーンと騒がしい音を立てた。その時に微妙な音のずれに気付いた。  それは、まるで水面に一石投じた波紋のような広がり。  知己は、この生じた音のズレの意味を考えた。 (わずかながらに音のズレがある。彼らは同時に嫌がらせ行為をしているように見えて、つまり厳密にいえば一斉に行えていない。わずかなタイムラグがある)  知己が指名した途端に、皆が同じ行動を取ると思っていたのだが、だったらこの音のズレはどうして起こるんだろう。  多少呑気者も混じっている所為かもしれないが、波紋のような連なる音と行為のズレ。  予め打ち合わせされた行為なら、こんなズレは起きない。  一斉に行っているようで、実は少しずつ波紋のように広がる嫌がらせ。 (よくやるな……とは思っていたが)  知己が何回指名するか、生徒たちは知りえない。  いくつもの嫌がらせを考え、それを化学・生物の時間の度に30名前後のクラスメイトに周知させるもの大抵の作業だ。 (打ち合わせせずに、みんなで揃って嫌がらせをする……よく考えたら、簡単なことだ) (誰ががするのを真似たらいい。それを一斉に行う。わずかなタイムラグは、それを見て真似るための時間差だろう)  至ってシンプルだ。  それで知己は、今日の授業の3年1組で指名する度に周りをざっと見渡した。
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