入学式の翌日は 1

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「敦ちゃんも敦ちゃんで、以前は『親の言いなりが嫌』とか見事に思春期男子をしてたし、学校大好きであんまり休みたくなかったくせに、あの事件あってから些細な理由で学校休むようになっちゃったんだ」 (あの事件……)  特別教室棟で喫煙疑惑だ。  以前、知己は敦の出席を1年生まで遡ってチェックした。  確かにそれまではそこまで目立たない欠席が、その日を境に異常に増え、一時は進級さえも危ぶまれた。二年になっても適当な理由で「週休三日制」だの言って定期的に休んでいたが、文化祭での知己との約束で休まなくなった。 「……って、ええ!? 学校大好き?!」  それまで黙って聞いていた……というか聞かれてもいないのに章がベラベラ一人で喋ってた状態に、ようやく知己が目が覚めたかのように突っ込んだ。 「うん。そうだよ」  知己の反応に、少し心外そうに章が答える。 「いや、あの、……二年生でも自主的週休三日制導入してたよな?」  歯切れ悪く知己が訊いた。 「何、言ってんの。そう簡単にメンタル治んないよ。何にも悪いことしてないのに言いがかりつけられて、証拠不十分でお咎めはなかったけど校則変えられて……ピュアな敦ちゃんの心はバッキバキに折れちゃったんだよ」  折れ方がハンパない。 「章は折れなかったんだな」 「何? 僕がピュアじゃないって言いたいの?」 「……そうは言ってないが」  微妙な間が、言ったも同然だった。  またもや、ぷうっと膨れた章が 「そこは人それぞれの感受性の違いでしょ?」  と言い返した。 「僕だって腹立たしかったから、前の理科担をシめるの手伝ったんだけどね。それでスッキリした俊ちゃんや僕とは違って、敦ちゃんは軽く病んじゃったんだと思う」  病んだ?  元気に教師に悪態つく敦が?  いざとなったら権力振りかざす敦が? (俺の中の「病む」の定義を更新しないといけないな……)  知己は真剣に思った。 「敦ちゃんは『きまりは絶対』みたいな面倒な自分縛りしちゃうタイプでしょ」 (あ。章も敦を面倒なタイプだと思ってたんだ……) 「校則変更が一番しんどかったかもね。どんなに自分は正しくっても結局の所、認めてもらえなくって。先生が自分の非を認めず、そんな方法で仕返ししたってのも受け入れ難かったのかも。報復の教師苛めゲームやってても、ちっとも敦ちゃん楽しそうにしてなかったし」
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