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知己は門脇を思い出していた。
(門脇も似たようなこと言ってたな。大人……特に学校の先生は謝らないって)
「その顔、何か思い当たるの?」
「ああ、まあ」
門脇のことは伏せた。
言うと、章がまた「蓮様ー!?」とうるさくなるか、「蓮様のことを思い出しているなんて、むきゃー!」と騒ぎ立てそうだ。
「でも、先生はちゃんと謝る変な先生だよね」
「それ、褒めてないな」
「さっきのお返しだよ」
章はピュアじゃないと言われたことを根に持っているのだろう。
「まあ、そういう訳で……どんなに学校好きでも、あんな仕打ち受けたら、そうなっても不思議はないでしょ? やさぐれてちょっとでも体調悪いとすぐに休むようになったんだ。一年生の時は、なんだか学校来なくていい理由を一生懸命探していた感じだよ」
「敦が学校好き? ……好き? ……大好き?」
どうしても納得いかない。
「そうだよ。学校大好きなくせに、行きたくなくなって行けなくなって苦しんでいたんだから」
「分からん……」
「いいよ。分かんなくたって。敦ちゃんの複雑なお年頃心理は、僕だけが分かっていればいいんだから」
章が17歳にて悟りを開いた境地で答えた。
「……ぁ」
知己が何かに気付いた。
「何? その顔」
同じ質問を繰り返す。
「章……。お前、…………意外と良い奴だな」
「僕が良いヤツって今頃気付いたの? でも本当、面倒なお隣さんの幼馴染もつと大変だよ」
知己の脳内で、章は「隣のおばちゃん」から「世話焼きおばちゃん」に進化していた。
「だから、昨日、熱出したから今日は休むだろうなってのは想定内。まあ、以前と違って敦ちゃんは行きたかっただろうけど……ちっさい頃から体のことを心配している家の人が行かせないよね。きっと今頃、元気に布団の中でネトゲーしていると思うよ」
過去のことを考えたら、そこは大事をとって家の者が行かせなかったのだろう。
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