入学式の翌日は 1

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 知己は門脇を思い出していた。 (門脇も似たようなこと言ってたな。大人……特に学校の先生は謝らないって) 「その顔、何か思い当たるの?」 「ああ、まあ」  門脇のことは伏せた。  言うと、章がまた「蓮様ー!?」とうるさくなるか、「蓮様のことを思い出しているなんて、むきゃー!」と騒ぎ立てそうだ。 「でも、先生はちゃんと謝る変な先生だよね」 「それ、褒めてないな」 「さっきのお返しだよ」  章はピュアじゃないと言われたことを根に持っているのだろう。 「まあ、そういう訳で……どんなに学校好きでも、あんな仕打ち受けたら、そうなっても不思議はないでしょ? やさぐれてちょっとでも体調悪いとすぐに休むようになったんだ。一年生の時は、なんだか学校来なくていい理由を一生懸命探していた感じだよ」 「敦が学校好き? ……好き? ……大好き?」  どうしても納得いかない。 「そうだよ。学校大好きなくせに、行きたくなくなって行けなくなって苦しんでいたんだから」 「分からん……」 「いいよ。分かんなくたって。敦ちゃんの複雑なお年頃心理は、僕だけが分かっていればいいんだから」  章が17歳にて悟りを開いた境地で答えた。 「……ぁ」  知己が何かに気付いた。 「何? その顔」  同じ質問を繰り返す。 「章……。お前、…………意外と良い奴だな」 「僕が良いヤツって今頃気付いたの? でも本当、面倒なお隣さんの幼馴染もつと大変だよ」  知己の脳内で、章は「隣のおばちゃん」から「世話焼きおばちゃん」に進化していた。 「だから、昨日、熱出したから今日は休むだろうなってのは想定内。まあ、以前と違って敦ちゃんは行きたかっただろうけど……ちっさい頃から体のことを心配している家の人が行かせないよね。きっと今頃、元気に布団の中でネトゲーしていると思うよ」  過去のことを考えたら、そこは大事をとって家の者が行かせなかったのだろう。
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