入学式の翌日は 2

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入学式の翌日は 2

「ねえねえ。二人で暇だからクイズでもしない?」 (俺は暇ではない)  ぴしっと知己の眉間に皺が寄った。 (明日の授業の準備がしたい)  当然、 「しない」  と即答した。 「クイズが嫌なら、ゲームでもいいよ」 (同じだ) 「しない」 「ケチ」  どうせやったところで、また何か罰ゲームか報償を求めてくるのだろう。  しないに限る。 「じゃあ、好きな人の当てっこしようよー!」 「……なんで、だ」  奇想天外な章の提案に知己は心底呆れた。 (修学旅行の夜じゃあるまいし) 「僕が先生の好きな人を当てたら、僕の言う事を1つ聞いてよ」 「嫌だ」 「逆に、僕の好きな人を先生が当てたら、言う事聞かなくてもいいから」 「待て。そのルール、俺にいいこと一つもない」 「でも、ウルトラライトなお尻の持ち主の先生の好きな人を当てるのは、意外に難しいかもなぁ……。困ったなぁ」 「待てと言っている」 「ま、いっか」 「嫌だと言っている」 「じゃあ、いっくよー!」  ぶつぶつ言いながらも章は強引に話を進めた。 「俺はしないと言っているのに……!」 「ジャカジャン! 先生の好きな人は誰でしょう?」 「やーめーろー!」  とうとう知己は教科書を放り出して叫んだ。 「1番・将之さん。2番・ライオさん。3番・教育委員会の黒王子様」 「なんだ、その選択肢はー!?」  さっきの「困ったなぁ」は、なんだったのだ? ……の、実質一択だった。  しかも、その選択問題を章が出していること自体がおかしい。 「え、あ……? ……よ、④の誰でもなぃ」  最後まで言わせずに 「はい、嘘つきー! 嘘つきー! 先生、僕のいうこと聞いてもらうね!」  章がきゃっきゃと喜び、騒ぎ立てた。 「……一体、俺に何をさせる気だ?!」 「ま、それはこれからゆーっくり考えるよ! んふふっ」  すっかり上機嫌だ。 「いや、ちょっと待て!」 「何?」 「俺にも解答権があるだろ」 「えー?」  章は白々しく首を傾げてみせた。 「章の好きなヤツ答えたら、さっきのチャラになるんだったろ?」 「あはは! 無理無理! そんなの分かるわけないもん」  取り合わずに、章は 「ウルトラスーパーライトなお尻の持ち主の先生は、ウルトラスーパー巡り悪い鈍感さんだもん。分かるわけないよ」  ウィンクしながら、ひとさし指を「ちっちっち」と振ってみせた。
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