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(残念ながら、俺にも分かった)
好きな人のことは、何でも知りたい……と昨夜、将之が言っていた。
知己だってそうだ。
(俺も、将之のことはなんだって知りたいもんな。隠されたら嫌だし、将之のことは俺だけが分かっていたらいいと思うし)
いつだって、その人の最大の理解者という立場に居たいのなら……。
章が、なんでも知っている人物……。
「……敦」
「はあ? 何それ、ブッブー! 違いまーす!」と章は、けたけた笑って誤魔化すかと思っていたが
「はあ? 何それ。…………………………………どこで分かった?」
見たこともない真っ赤な顔して、戸惑っている。ダラダラと汗をかき、凝り固まったような微笑み浮かべ、目は泳いでいた。
(動揺した章を初めて見た……!)
言い当てたことよりも、章の戸惑い顔の方に衝撃を受ける。
「えーっと……」
(なんか調子狂うな)
と思いつつ、知己は
「お前が敦のことなら何でも分かる所……と、なんだかんだで敦を守っている所かな」
「はああああ? 何、それ。守って……とか、そんなことしてない!」
今度はキれ気味だ。
「敦が、例の教師苛めゲームをしながらも傷ついているのに気付いて……お前、とめたかったんだろ? それで俺にとめさせるように仕向けた」
「そんな訳……ない」
という割に、汗がさっきよりも滴り落ちている。
「あとは……、あの広い梅木邸の中の敦の行動をよく知っている所かな」
「だって、それは盗聴器付けているからね」
サムアップしながらウィンクして答える章に
「それ、犯罪じゃ……なんだ冗談か」
ツッコみかけて、知己は気付いた。
「え? 嘘。なんで冗談だと分かった?」
「お前のその余裕のない顔見たら、誰でも分かる……」
というくらい、章は切羽詰まった顔をしていた。
「う……ん。盗聴器というのはもちろん嘘。
だけど何度も遊びに行っているから、敦ちゃんの部屋の位置は分かってるでしょ。電気点いてたら起きている時間も分かるし、ライン送ったりするから何をしているかも大体知っている……ってか、あー! 悔しい! なんで動揺しちゃったかな、僕。絶対に言い当てられても知らんふりしようと思ったのに……先生の馬鹿正直さが移っちゃったのかも。どーしてくれる?」
「ここで俺の所為にする気か」
理不尽にも睨む章に、知己は呆れていた。
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