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「先生ー、待たせたな! 委員会の話し合い、やっと終わったよー! 俺、もうへとへとー。だけど、先生に会うと癒されるから遅くなったけど来たぜー! 俺を癒してくれ、先生ー! ギブ ミー ヒーリング!」
言いたいことを好き放題駄々洩れにしながら、俊也がガサガサと室内に入ってきた。
「ぁっ……!」
乱入さながらにやってきた俊也に驚き、教卓に頬杖ついていた章が慌てて知己から離れた。
心なしか知己もほんの少し、急いで後ろに反った気がする。
「……え? あれ?」
妙な雰囲気の二人に、俊也が
「お前ら……? 今、一体、そこで何をして……?」
と、顔をひきつらせた。
放課後の学級委員の会合が思いのほか長引いて、やっと終わった。
急いで理科室に来たものの、太陽はずいぶんと西に傾いていた。
夕日さす茜色の室内で教卓挟んで語り合う二人はかなり接近していて、どことなく秘密の匂いがした。
(……………………先生と章、二人きりでナニやってたんだー!?)
俊也には、もうナニしか思いつかなかった。
「ううん、別に……! 何にもしてないよ!」
ナニかした時のテンプレな言い訳を章が放つ。
いつも何があっても平然としている章が、珍しくテンパっているようにしか見えない。「何もしていない」と敢えて言いながら、ぶんぶんと勢いよく手を横に振るあたり、取り繕っている感満載だ。
(絶対にこいつら、一線越えてたー!)
心なしか、頬も赤い。
とても夕日の所為だけだとは俊也には思えなかった。
(絶対に不純同性交遊してたー!)
そう思ったら、もうそうとしか思えない。
俊也は声にするのを憚られながらも、心の中で叫びまくっていた。
「じゃあ、先生。俊ちゃん来たから帰るね。バイバーイ!」
章は俊也が入ってきた理科室のドアまで強引に押し返し、教卓の知己にバチンとウィンクを送った。
(……………………か…………………………!)
おそらく、「さっきの話は秘密」のウィンクだったが、俊也には「さっきシたことはヒ・ミ・ツ(ハート)」のウィンクにしか見えなかった。
(……確定だー!!!!!)
驚愕の事実(?)と勝手に確定し、俊也は無言で目と口をカッと開いていた。
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