入学式の翌日は 3

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「変なスタンプ、やめろ」 『え?  スタンプ?』  やはり秒で返信が来た。  お互いリアルタイムでやり取りしているものだから、送ったら即「既読」がつく。 「とにかく、ナニとは何だ?  さっぱり分からん。  具体的に言え」 『少なくともキスはしてた』 (?!)  ピンポンのように軽快にやり取りしていたメールラリーが、ピタリと止まった。 (あ。敦、フリーズしたな……)  と俊也は思った。  俊也の予想は大当たりで、自室のベッドの上では敦が携帯片手に時間を停めていた。 (……いやいや、待て待て)  冷静さを取り戻そうと、敦は深呼吸をする。 (俊也のあほで全く参考にならない報告は、2月に経験済だろ?)  ライオこと将之と尾行した時のことがある。  本人は至って真剣だったが、俊也のダメ過ぎる報告にかなり振り回されたではないか。 (……)  だが、返信を打とうと思っても指が動かない。思ったよりもショックを受けているようだ。  1分ほど待っても敦から返信が来ないので、俊也は更にメールを送ることにした。 『俺、放課後は学級委員の会議があってて、  理科室には先生と章だけだったんだ。  遅れて行ったら、二人がめちゃくちゃ近かった。  あの顔の近さは間違いなく、キス後だと思う』 (いや。顔が近いってだけで、キスしたとは言い切れない。例えば……例えば…………、えー……例え……ば……?)  だが、逆にキス以外に顔を近づける理由が今の敦には思い当たらなかった。 『それに、あの章がテンパってた』 (……章がテンパる?)  多少のアクシデントがあってもクレバーに章は対応していた。  これまでにも窮地に陥っても巧いこと交わして、敦は何度も助けられたことがあっただけに、「章が」→「テンパる」の言葉が馴染まなかった。  そうなると、俊也の「少なくともキスしてた」が真実味を増してきた。 『「何してた?」と聞いたら、 「何にもしてない」ってごまかした。  これって絶対に変だろ?  喋ってたにしろ、先生の仕事手伝ってたにしろ  やましいことしてなかったら、  ちゃんと言うよな?』  確かに「何もしてない」わけがない。 (「何もしてない」って言うのは、言えない何かをしていた時の言葉だよな) 『しかもあの章が頬赤らめた。  帰り際には先生にウィンクもしてた。  少なくともキスした後の、デキちゃったイケナイ二人って感じだった』 (二人きりになった途端、章が悪徳教師とキス!)  敦の頭には(ヤりそう!)としか浮かばなかった。
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