入学式の翌日は 3

4/4
前へ
/778ページ
次へ
 そうなると、怒りの矛先は知己へと向かった。 (悪徳教師め。大人なんだから、しちゃダメなことは分かっているだろうに、章に流されやがって……馬鹿か! あいつは馬鹿なのか?! 大人のくせに馬鹿なのか!)  すっかり語彙が崩壊し、気付くと馬鹿を連呼するチープな罵りしか出てこなかった。 (何を今更……。大人なんか信用しちゃダメだって、分かってたのに!)  敦は、ここでもう一度 (ダメじゃん、俺。冷静になれ!)  と自分を鼓舞し、深呼吸をした。 (よし! 落ち着いたぞ。ええい、落ち着け、俺。まずは俊也に送信……)  そして、布団を頭からガバリとかぶる。  布団の中で携帯の画面だけが煌々と光っていた。  あまりにも俊也への返信を放置している。  既読スルーが過ぎる。  敦は、そこから手を付けることにした。 「くぇrちゅいおp@(qwertyyuiop@)」  全く落ち着いていなかった。  何やってんだ……と速攻、削除。 「まじ卍(※)」  とりあえず、これでいいだろうと送信。 「……あれ?」  今度は、俊也から返信がない。 「既読」さえもつかない。 (まさか、あいつ……喋るだけ喋り倒して、寝落ちた?)  敦の反応のなさと、今日の長かった学級委員たちによる会議。そんな真面目な場は慣れない。疲れ果てた所に遭遇した知己と章のラブラブイベント。この衝撃を敦に語りつくして満足したのか、俊也は携帯握りしめて寝落ちていた。 (ぬぉぉぉぉぉ! ぬぉぉぉぉぉ! ぬぉぉぉぉぉ……っ!)  今後の対策を練ろうと思っていたのだが、予想だにしなかった俊也の寝落ちに、敦は脳内消化不良を起こす羽目になった。  そうして、その夜は敦が一人悶々と過ごすこととなった。 ※マジ卍・・・感覚的ではっきりとした意味のない言葉らしいです。「やばい」「すごい」みたいにいい意味にも悪い意味にも取られていて、音のノリだけで使われているとか。ググったらもはや死語とも。
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

242人が本棚に入れています
本棚に追加