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そうなると、怒りの矛先は知己へと向かった。
(悪徳教師め。大人なんだから、しちゃダメなことは分かっているだろうに、章に流されやがって……馬鹿か! あいつは馬鹿なのか?! 大人のくせに馬鹿なのか!)
すっかり語彙が崩壊し、気付くと馬鹿を連呼するチープな罵りしか出てこなかった。
(何を今更……。大人なんか信用しちゃダメだって、分かってたのに!)
敦は、ここでもう一度
(ダメじゃん、俺。冷静になれ!)
と自分を鼓舞し、深呼吸をした。
(よし! 落ち着いたぞ。ええい、落ち着け、俺。まずは俊也に送信……)
そして、布団を頭からガバリとかぶる。
布団の中で携帯の画面だけが煌々と光っていた。
あまりにも俊也への返信を放置している。
既読スルーが過ぎる。
敦は、そこから手を付けることにした。
「くぇrちゅいおp@」
全く落ち着いていなかった。
何やってんだ……と速攻、削除。
「まじ卍(※)」
とりあえず、これでいいだろうと送信。
「……あれ?」
今度は、俊也から返信がない。
「既読」さえもつかない。
(まさか、あいつ……喋るだけ喋り倒して、寝落ちた?)
敦の反応のなさと、今日の長かった学級委員たちによる会議。そんな真面目な場は慣れない。疲れ果てた所に遭遇した知己と章のラブラブイベント。この衝撃を敦に語りつくして満足したのか、俊也は携帯握りしめて寝落ちていた。
(ぬぉぉぉぉぉ! ぬぉぉぉぉぉ! ぬぉぉぉぉぉ……っ!)
今後の対策を練ろうと思っていたのだが、予想だにしなかった俊也の寝落ちに、敦は脳内消化不良を起こす羽目になった。
そうして、その夜は敦が一人悶々と過ごすこととなった。
※マジ卍・・・感覚的ではっきりとした意味のない言葉らしいです。「やばい」「すごい」みたいにいい意味にも悪い意味にも取られていて、音のノリだけで使われているとか。ググったらもはや死語とも。
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