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その後の敦 1
その翌日。
章は、敦を迎えに行った。
(一昨日の帰る時の元気の良さからいったら、今日はさすがに学校行けるよね)
「敦ちゃーん! がっこ、いこ!」
今時小学生でもしない呼びかけを、インターフォン越しにする。
梅木家と吹山家は隣同士で、昔から家族ぐるみのお付き合い。敦の家族も使用人も変な子が来たと思うことはない。むしろ、
「章ちゃん、通常運転だな」
ぐらいなものだ。
通常運転でないのは、敦の方だった。
章の呼びかけに応じて、1分経たないうちに敦は玄関先に現れた。
「あれ?」
分厚いメガネの内側だったが敦の目の下に隈を、章は見つけた。
「昨日休んでおきながら、睡眠不足? ゲームやり込んだの? 今日、また熱出たら大変じゃない? というか今日こそ休んだら?」
「……絶対に嫌だ」
ぼそりと敦が答える。
(俺が休んだら、またお前は悪徳教師と大人の階段一段飛ばしで上がるだろ?!)
章をジロリと睨む。
(というか、俺に休めと言うなんて……今日、悪徳教師と不純同性交遊の続きをする気か?)
そう思ったら、もうそうとしか思えなかった。
(……絶対に阻止する!)
章は純粋に敦の体調を心配していた。
(昨日、敦ちゃんの部屋は早々に電気が消えていたから、安心していたのに)
実際は、布団被って色々考えていた。
俊也から聞いた話を思い出し、想像し、俊也が来なかったらどうなっていたのかとアール18的なことを悶々と考えていたものだから、夜は眠れなかった。ただ不本意に昨日休んだから、昼間に十分寝ていたのもある。目に隈はできていたが体は健やかだった。色々想像して、心は不健全だったが。
「自主週休3日制やめた途端、皆勤賞に拘ってんの? 敦ちゃん、振れ幅大きいね。どうせ昨日休んでいるから皆勤賞取れないよ。熱出す前に、今日は休んだら?」
純粋に敦の体を心配しての章の言葉だったが、敦は
「……」
(俺を欠席させて、お前は悪徳教師とナニをナニして、ナニとナニでナニがナニやら……という魂胆だな!?)
としか受け取れなかった。
「……絶対に休まない!」
ぷいっと敦はそっぽを向いた。
意固地になった敦の頑なさを理解してない章ではない。
「あーあ。何に拘ってんだか……」
呆れて、もう休めと勧めはしなかったが、敦の方は
「ナニ!?」
と過敏に反応していた。
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