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その後の敦 2
理科室には先客がいた。
「おいーっす!」
他でもない。俊也だ。
「何をやってんだ、俊也」
昨夜、ある意味迷惑メール三昧に遭わせられた敦が訊き
「俊ちゃん……。今日は早かったんだね」
放課になった途端、飛び出した……と思ってたら行先は一緒だったという俊也の理解不能な行動に章も訊いた。
「だって、早く来ねーと章がまた暴走するだろ?」
そう言ってコンテナを2つ重ねて運ぶ。
あわよくば、自分も知己と二人きりの時間を少しでも……という画策があったかもしれない。
だが、どうやら明日は実験があるらしい。
来るなり、知己にメモと空のコンテナを6つ渡されて、実験の準備を手伝わされているようだ。
「先生は?」
すぐに知己を探す章の言葉に
(……章……。やっぱり二人は……)
いつもの章の言動なのに、敦はそんなことを考えていた。
「先生は、準備室の薬品庫になんか探しに行ったぜ」
肝心の知己はすぐに居なくなったものの、それでも知己に言いつけられたのが嬉しくてたまらない俊也は、気持ち悪いほどの満面の笑顔である。
((どエムだなぁ……。下僕だなぁ……))
声には出さないが、図らずも敦と章は、メモを見ながらせっせせっせと働く俊也に同じことを考えていた。
そこに知己が準備室から顔をひょっこり出した。
「お、来たか。お前らも手伝え」
「なんで俺が……!」
と言う敦の横で
「明日は何の実験なのー?」
すっかり知己のお手伝いがデフォルト仕様の章がすり抜けていく。
ドップラー効果で声を残しつつ章は、すぐさま俊也の元に向い、知己のメモを奪い取った。
(そんなに……?)
章は単に要る物を確認しているようだが、敦の心には暗い影を落としていた。
(そんなにあいつが書いたメモを見たいのかよ。俊也があいつのものを持っているのが許せないのかよ)
白衣翻し薬品片手に準備室から出た知己を、じろりと敦が睨む。
(このマッドサイエンティストめ……。章をたぶらかしやがって……! いや、章を血迷わせやがって……!)
敦の想像の中と言えど、章はたぶらかされるタマではない。
昨日の俊也のメール後、敦は今後の対策を考えようと思ってたのに、どうにも章と知己の理科室でのことを妄想してしまって無理だった。
敦の想像の中で
「あ……ん、先生。そんな……ダメぇっ……待っ……あ、ぁぁっ!」
の流され章よりも
「そう……先生、上手……そこ、んっ、強く……そ、あ、ぁぁっ!」
と強気に誘う章で修正した方が、驚くほどしっくりしていた。
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