その後の敦 4

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『いいご身分だよねー。僕がこんなに悩んでいるのに、これから一体ナニをするんだか』 「そ、そんなことは……ない」 『即答できないのが怪しい』 「しない」  章に言われて即答したが、知己は(なんか生々しいな)と思った。  だが、多分、章は気にしていない。 『本当? だったら明日、先生、全裸になって僕に体を見せてよ』  とトンデモナイことを言い出した。 「……なんでだ? 何故俺がそんなことをしなくちゃならないんだ?」 『ナニかした証拠を見つけちゃう』  冗談か本気か分からない章の言葉に、ちらりと原因作った将之を見ると、妙に涼し気な顔して佇んでいる。 (こいつ……! 悪戯にもほどがある!)  将之はたった今、風呂からあがった風を装っているが、違う。  章からの電話が気に入らなかったのだ。  知己の「章か?」を聞きつけ、ずっと聞き耳を立てていた。なかなか話が終わらないのをやっかんでの仕業だ。  その証拠に知己から睨まれているのに、やたらと嬉しそうに微笑んでいる。  それどころか 「ねえねえ、章君」  と携帯に向かって大声でしゃべり出した。 「敦君は、自分のことを嫌ってないと思うよ」 『え……!?』 「お前、一体、何を言い出す……!?」  デリケートな問題にずかずかと入ってくる将之の神経が信じられない。  章は将之の言葉を聞きつけ 『本当!?』  と飛びついた。 「うん。それに章君に好かれて死ぬほど辛くないと思うけど」 『先生! 先生! 代わって! ちょっと将之さんと喋らせて!』 「え……。嫌だ」  本能的に反射で純粋に嫌がっていたのだが 『…………………何、嫉妬してんの?』  あらぬ疑いを章にかけられた。 「してねーよ!」 『僕、取ったりしないよ』 (……無性にムカつく言い方するなぁ……)  章に将之を取られる心配も全くしていない。ただ純粋に  (ああ、もう。絶対に将之が絡むとややこしくなるー)  と思ってのことだった。 『じゃあ、代わってよ。妬いてないのなら、代わってもいいでしょ? 代われないっていうのは、やっぱりジェラシー? 明日、全裸にしちゃうぞ!』  と面白半分に言われ、 (ちくしょう……。さっきまで章はすごく凹んでた筈だったのに、なんで今、こんなに元気になってんだ?)  知己は妙に引くに引けない状況に追い込まれて 「……将之。章が喋りたいって」  渋々電話を将之に渡した。
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