その後の敦 4

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『それで、将之さんは敦ちゃんの言動をどう思われます?』 「……君は素直じゃないね。その妙な言い回しは損をするよ」 『余計なお世話です』 「なんで、そんなに突っかかるの?」 『先生と一緒に居るからです』  携帯挟んで将之にくっつくように聞いていた知己は、章の発言に慌てて離れた。 (章……、見えてないくせに間接的に攻撃してきやがる……)  章はなにげなく言ったのであろうが、心臓に悪い。 『他人の不幸は蜜の味だけど、他人の幸福はマンゴーの味です』 「何、それ?」 『僕、マンゴーやアボカドを食べると喉が痒くなるんです』 「……そう、それは辛いね」  知己も (美味いのに……食べられないのか。可哀そうに……)  と少しだけ思った。 「とりあえず、僕の印象だけど。しかも二回しか会ったことないけど。敦君は自分自身を嫌うなんてないと思う。多分、彼は自分のこと大好きだよ」 『僕もそう思います。あの子、自意識過剰の自分大好き人間だと思ってました』 (章……なにげに敦のことを酷く言ってないか?) 「そんな敦君の死亡動機が自分のことが嫌いっていうのも変だし」  そこで将之がニヤリと知己に笑ってみせた。 (あ、こいつ。今、【いいこと言った!】みたいな顔した。  なるほど「志望動機」と「死亡動機」をかけたんだな) 『……』  電話の向こうでは章が複雑な顔になっているのだろう。妙な間が空いた。 「えーっと……君に好かれたら死んじゃうっていうのも、話がズレちゃうよね。だからそれは章君の思い違いじゃないの?」 『そっか……。そうかも。その方がすっきりします』  章の穏やか声。  それで、章が納得したのだろうというのが伝わった。 「そもそも、どうして章君の好きな人が自分だと敦君は知っているの?」 『それは……先生が喋ったから』 「先輩が? ……ちょっと待っててね」  将之は知己の方をチロリと見た。 「先輩、章君の好きな人のことを敦君に喋りました?」 「そ、そんなこと言うわけない!」  知己は、犬が水を弾き飛ばす動きと同じ勢いで首を横に振った。 「そんなことをしたら、仕返しに将之のことを吹聴される!」 『もちろん! 明日、絶対に言いふらかそうと思ってた』 「俺はやってない!」 『じゃあ、誰がばらしたんだろ?』 「絶対に俺じゃないからな!」  刑事ドラマの1シーンのような二人の会話に将之が 「先輩たちは、一体、学校で何の話をしているんです?」  と呆れ気味に呟いた。
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