その後の敦 4

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「その心理、僕には理解できないけど。家永さんに似ているのかな?」 『誰? それ?』 「むぐっ……!」  章の方には、将之の苦し気な息とドスンバタンという物音だけが聞こえた。おそらく、 (これ以上、面倒にするな!)  と慌てて知己が口を塞いだと思われた。  『じゃあ、僕の好きな人のことを分かってないのなら、どうして敦ちゃんは【お前の恋を応援できない】なんて言ったんだろ?』 「簡単だよ」 『簡単?!』  章が驚きの声を上げた。 「君に好きな人がいると敦君は分かっているんだ」 『先生……やっぱり喋ったの?』 「俺じゃない!」  またもやさっきのリプレイが始まりそうだった。 「章君、待って。先輩以外に、昨日理科室に来た人物……俊也君が怪しいと僕は思う」 『俊ちゃん!?』  章の声が跳ね上がった。 『……盲点だった。俊ちゃんが敦ちゃんに何か吹き込んだんだね』 「推測の域を出ないけど。俊也君には、それはもう見事な前科があるからね」  2月。  章と知己の後をつけさせて、俊也に報告させた苦い思い出が将之にはある。 『俊ちゃんなら、ありうる……。あることないこと、火のない所に煙を立てそう』 「明日、俊也君に聞いてみるのをお勧めする」 『任せて! 厳しく追及するのは得意だよ!』 「それは拷問というのでは……」 『違う。に、!』  言い張る章に、知己は明日の俊也の運命に同情した。   (ほら、やっぱり面倒になった……。どうせ、放課後の理科室でヤるんだろ?)  明日の午後、俊也は章に吊るし上げられることが決定し、それを見せられるであろう知己は目の前が暗くなった。 「明日、俊也君が敦君に何を吹き込んだかが判明するとして……。  次に分かったことだけど、敦君は理科室を怒って飛び出したんだろ? で、章君の【恋】と断言した。章君の他に理科室に居たのは、先輩と俊也君」 『うん、うん』 「俊也君は余計なこと吹き込んだ本人だから()けといて」 (なんか、俊也が可哀そうになってきたな……) 「敦君が怒ったのは、章君の好きな人が先輩だと思っているからだと思う」 (どうして、そうなる?!)  章も同じ思いだったらしく 『どうして、それで敦ちゃんが怒るの?』  と尋ねた。 「だから【簡単】だと言ったんだ。敦君も先輩のことが好きだから、だよ」 『そっか! それで僕の恋を応援できないって言ったんだ。好きな人が被っているから!』 「そういうこと」 「何が、【そういうこと】だー!」  たまりかねて知己が口を挟んだ。
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