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「あいつ、俺のことを【悪徳教師】といつも罵っているぞ」
『敦ちゃん、お臍曲がっているから。カップルが二人で飲む用のトロピカルジュースのストローか、ジェットコースターかってくらいに曲がっているからね。照れているんだよ』
「どんな照れ方だよ?」
それに敦の臍が気持ち悪い形状にされている。
「しかも全然、俺のいうこときかないぞ」
『大丈夫。敦ちゃんはどの先生の言う事も聞かないよ』
「それ、全然大丈夫じゃないからな!」
章が語るのは、敦の自由さ奔放さ傲慢さの暴露であった。
『そう言えば、以前喪女が学校に来た時に、僕、先生に会わせないよう画策したんだけど』
「そんなことしたの?」
『うん。卒業式の時』
「あ。確かにお前ら、教室を抜け出したな」
喪女=前田千寿のことである。
(前田君……ラノさんに会いたがっていたのに、この子達に邪魔されたんだ。可哀そうに)
実際に教育委員会来賓として居たのは将之であったが。
『俊ちゃんは分かるよ。ラノさん大好きだから一緒になって邪魔するの。でも敦ちゃんは、関係ないのにわざわざついてきてた! そっか。実は先生のことを気にしてたんだ』
なにげに酷い章の発言だった。
「……それ、敦だけ除け者にするなよ。章と俊也が抜けだしたから、敦も面白がって一緒に抜け出しただけだろ……?」
そこに将之が
「章君と先輩が不純同性交遊しそうになった時も、僕と一緒になって邪魔しようとしたよね」
章の後押しをするような話をした。
(将之……。お前こそ、高校生と一緒になって何やってんだ?)
熱く語りかける将之を見る知己の目が、残念なものを見る目になっていた。
「先輩が君とホテル行くってなった時に【ぬわにぃっ!?】て謎の日本語で、すごく取り乱してたよ! ……っ、むぐぐぅぅ!」
(もう、将之まで章の火に余計な油を注ぐなー!)
たまりかねた知己が将之にヘッドロック(※)をかけた。
再び聞こえてきた将之のくぐもった声に、すかさず章が
『そこのばカップル、いちゃつかない! リア充、爆発しろって言っちゃうぞ!』
「い、いちゃついてねー!」
またもや章に見られたかのようなツッコミを受けて、知己は慌てて将之から離れた。だが、「ばカップル」と認めてしまったようなものだ。
※ヘッドロック・・・脇に相手の頭を抱え込んで動けなくするプロレスの技。
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