ゲーム 開始 4

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「あっちゃー。そっち行ったかぁ」 (そっち? どっち?)  きょとんとする知己を相手に、今日も章はご機嫌に饒舌だ。 (なんで、こいつはそんなに機嫌良いんだ? 今日も門脇が来るかどうか、分からないのに) 「先生。そうじゃないだろ。よーく考えてよ」  ウキウキと楽しそうに語る章に (こいつ、心底楽しんでいやがるな)  と思う。 「3学年9クラスのその日の首謀者って、誰がどうやって決めているの?」 「え?」 (誰が決める?)  そんなの、考えたことなかった。  適当に生徒たちがその日にじゃんけんでもして決めているのだと思ったが、その考えに行きつく前に章が 「その日の首謀者を当てても、ゲームが終わらないクラスがあったでしょ?」  さらに訊いてきた。 「え?」 (そんなクラス、あったっけ?)  テンポよく訊かれ、知己は同じ反応しか返せない。 「ね、俊ちゃん」 「お、俺は何も喋らなーい!」  慌てて俊也は、ぷいとそっぽを向いた。 「震源地を決めているのは、誰かなぁ?」  章がまるで独り言のように言いながら、春うららかな理科室の窓の向こうを見つめる。 「震源地を……決めている人……?」  そんなやつ、いるのかよ。 「でさ、そのクラスだけは、当ててもすぐに首謀者を替えてゲームをし続けていると思うけど? ね、俊ちゃん」  油断していると、すぐに話を振ってくる章に 「……っ! 俺は絶対に喋らないーっ!」  自棄になって俊也は叫んだ。  それとほぼ同時に 「そうか! そういうことか!」  同じく知己も叫んでいた。 「それが本当の『当たり」なんだな!?」  章に聞くでもなく、俊也に確認するでもなく、知己はやっと理解して思わず言葉に出していた。
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