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(すっかり口調がおかしくなっている……)
章は刑事ドラマかなにか見たのだろうか。
「え?!」
俊也は明らかにキョドった。
「いや、ちょっと待て! なんか証拠でもあるのかよ?」
分かりやすくキョドった後に悪あがきにも俊也は言うが
(あー、分かりやすい。もう、これ絶対に犯人の反応。「俺が犯人でーす」な反応)
知己ばかりか、章、敦も同じことを思っていた。
「証拠? ふふふ……簡単な推理だよ、明智君」
「……誰?」
敦がキョトン顔で尋ねると
「間違えた。須々木君」
章が訂正した。
ついでに、章が最近観た昭和のドラマも判明した気がした。
「一昨日、先生と僕以外に理科室に来た人物……、それは俊也君。君だ」
章自ら、推理と公言している。
今、語られているのは状況証拠だけである。決して証拠にはならないが、残念ながらここにそれをツッコめる人物は居なかった。
「君には、それはもう見事な前科があるからね」
しかも将之受け売り発言のオンパレード。
仔細を知っている知己は
(こいつ……)
と呆れるばかりだったが、
「……すみません、俺がヤりました」
あっけなく俊也は、章曰くゲロった。
「なんか……章、かっこいいな、お前」
空気に飲まれて、敦が尊敬のまなざしを向ける。
(敦、お前も騙されているぞ。それ言ったの、ほぼ将之だからな)
と知己が思っていると、章が得意げに
「ふふ、私のことは『かつ丼いらずの章さん』と呼んでくれたまえ。明智君……いや敦君」
と照れ隠しなのか、本気で言っているのか分からない発言をした。
「……で? 俊ちゃんは、敦ちゃんに何を吹き込んだの?」
と章が改めて詰め寄る。
「俺が委員会の会合で遅くなって、ここに来たよな」
「来たね。それで?」
「あの時、先生とお前は二人、教卓に立って、親密な雰囲気出してたじゃねえか。だから俺はてっきり」
「ちょっと待って!」
章が俊也の言葉を遮る。
「親密な雰囲気じゃなく、僕と先生はいつだって親密だよ。すっごい仲良しなんだからね! そこんとこ、間違えないで」
「おい、章。お前こそちょっと待て」
章のツッコミの方向性が違うので、知己が慌てて止めた。
案の定、敦が
「むきゃー! いやー! 章が大人の階段一段ぬかしー!」
と真っ赤になって叫び、章から一歩離れた。
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