その後の俊也

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「……じゃあ布越しに亀頭撫では?」 「はあ?」  章が訊き返した。 「お前が『ねえ、触って』とねだって、『そう……先生、上手……そこ、んっ、強く……そ、あ、ぁぁっ!』みたいな」 「ちょっとちょっと、敦ちゃん、とまって止まって!」  滔々と淀みなく感情込めて語る敦を、慌てて章が止めた。 「敦ちゃんのピンクな妄想に、知能(オツム)幼稚園児の俊ちゃんが付いていけずに、頭から湯気出して倒れそうになっているから。しかも、先生なんか貧血起こしたみたいに座り込んでいるし」  俊也は真っ赤になったもののかろうじて立ち尽くしていた。知己はへなへなと教卓の裏側に座りこんでいた。 「亀頭撫でって、またそれ? 将之さんの影響って、いい意味でも悪い意味でもいつまでも残るなぁ」  昨夜将之の影響受けまくった章が言うのだから、異常に説得力がある。 「ごまかすな。したのか? してないのか?」  煮え切らない章の態度に、敦が苛立っていた。 「もー、よく考えて。俊ちゃんも言ったじゃない。『教卓挟んで』僕らは話してたんだよ。教卓が邪魔で、そんな魅惑の触りっこ、したくてもできないよ。ホラ、先生。ちょっとこの前の位置に立ってみてよ」 「『したい』とか言うな……」  たまりかねて知己が突っ込むと 「ものの例えでしょ。気にせず、さっさと立って協力!」  強引刑事長(デカ長)の章に言われ、知己は先ほどのダメージが抜けきれずに、それでもヨロヨロと立ち上がって、教卓の前に立って実況見分に応じた。 「……本当だ」  敦が呟いた。  俊也も頷く。  まさに今の位置がそうである。  章と知己は教卓を挟んでいる。  教卓が邪魔で、お互いの体に触れることはできない。 「俊也!」  敦は俊也を睨んだ。 「な、なんだよ。だって、その後帰る前に章はトイレに行ったんだぞ。スッキリした顔して出てきたぞ」 「章!?」  と今度は章を睨む。 「帰るのに小一時間かかるから、その前にトイレ行っとくのに何の不思議があるの? ただの生理現象。えっちな意味じゃなくて出すもの出せて、スッキリするのはヒトの(サガ)だよね?」  と章に言われ、敦はまたもや俊也を睨んだ。
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