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「覚えてないな……」
と隣の敦も言う。
「風紀委員どころか他の委員も誰だったか覚えてない」
というと、全面同意で章がうんうんと頷いた。
すこぶる関心は低い。
委員を決める時も最悪だった。
「俺は去年した」
「俺は一昨年した」
と1,2年の間にした者はことごとく拒否権を主張した。
そいつらを除けていったら、残るのは過去二年間「面倒」「したくない」「なんで、俺が?」となんだかんだと言っては委員会をしていない名だたる猛者ばかりだった。そんな中やむなく決めたので、誰が何の役員を引き受けたのか、俊也以外誰も全く分からなかった。
そんな決め方だったので、知己さえも覚えていない。仕方なく、春先だけつけてた記録簿の頁をそっとめくった。
「………………………ぁ」
小さく叫ぶ。
(誰だ?)
と思っている章と敦の前で、俊也がゆっくりと腕を上げた。
「……………………………………………お前だぁっ!」
オカルト映画か何かみたいに、俊也は章を指さして言った。
「敦ちゃんだったっけ?」
動じずに章が、隣の敦を見つめながら
「ダメじゃない。ちゃんと引き受けたお仕事はしないと」
とダメだしすると
「なんで、俺なんだ? どう見ても俊也の視線と指先はお前だろ?」
この期に及んでナチュラルに敦を風紀委員に仕立てようとする章を敦は咎めた。
「僕だったっけ?」
「そうだ、お前だ」
忌々しく俊也が答える。
「お前が会合も一切出ないので、学級委員の俺がこうして風紀委員みたいなことをする羽目になってんだ」
「気の毒に」
「お前がちゃんと働いたら、俺は気の毒でもなんでもない」
じろりと章を睨んだ。
「確かに……役員決めのあの日はついてなくて、ことごとくじゃんけんに負けちゃった気がするな」
朧げな記憶で語ると
「……一番風紀を乱しているヤツが風紀委員かよ」
敦が呆れて言う。
「風紀を乱した覚えはないよ」
この間、知己と一線越えた疑惑さえもすっかり忘れて章が言うと
「『亀頭撫で』という高度な愛情表現をねだるヤツが何を言ってんだか」
敦は言い返した。
「それ、なんだか僕が言った体になっているけど違うからね。事の発端は、みんな大好き・ライオさんでしょ?」
「「みんな?」」
敦と俊也がキョトンとすると
「……章ー!」
と知己が慌てて制した。
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