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「お、おい、章! そんなものも全部一緒くたにするな。返せなくなる……」
と知己が急いで止めたが
「返す必要ナッシングー!」
なぜか英語交じりに章が鼻息荒く言う。
そして、没収品で既にはち切れそうになったゴミ袋をドン引きしている知己にずいっと差し出した。
「ミッションコンプリート!」
と謎の敬礼をしつつ言う章に
「ぎゃー! こんなの、俺も要らん!」
衣類も食べ物も余暇を満喫させる趣味のモノも18歳未満禁止グッズもぐちゃぐちゃに詰まったゴミ袋を差し出され、知己は受け取り拒否をした。
「こんなものとは酷い。これは言ってみれば男子高校生の夢と希望と青春のすべてが詰まったゴミ袋なのに」
知己の揚げ足とっているものの、章も「こんなもの」としか思ってなさそうだ。
早く厄介払いしたいのだろう。
知己の教師用机の上に、どさっと音を立ててゴミ袋を置いた。
幸いにして、校則だけは守るため何も没収されなかった敦が章の肩から顔を覗かせ
「その言い方だと、男子高校生の夢と希望と青春のすべてはゴミと言ったようなもんだな」
と呆れてツッコんでいた。
そのツッコミに章は何かのアニメに影響されたような
「はっはっはー。男子高校生の夢と希望と青春がゴミのようだー」
と、やはり暴君風に受け答えをしていた。
事件は、その時に起こった。
没収された何かについていたのだろう。
男子高校生の机の中に詰まっていた夢と希望と青春っぽいものを一斉に引っ張り出されて、一緒に、黒くて艶光りのある羽根と長い触角をもつ虫がササササっと現れた。
「ぎぃ……ゃあーぁぁぁ……っ!」
敦が甲高い悲鳴を上げて、隣にいる章に飛びついた。
首に腕を回し、ひしっと抱きついている。
「……ワァ……、敦チャンノ声ニビックリシタ」
章が棒読みで、驚いていた。
その隙に虫は逃げようとしたが、DK界ではむしろ敦のタイプが少数派。誰も動じていない。
すかさず俊也が反応した。ノートを丸めて一閃。パーンと叩き、敦のみが起こしたムシムシパニックは、あっけなく幕を下ろしたのだった。
見事な瞬殺で退治した俊也が得意げに
「なんだ、敦。ゴキb……」
敦に話しかけたが、全てを言い終わらぬうちに
「言うなぁぁぁぁ!」
と敦が叫んで、耳を押さえた。
「……苦手か?」
敦の剣幕におされて、今度はおずおずと俊也が聞くと
「むしろ得意なヤツがいるか?! いや、いまい!」
パニクっている所為だろう。なんだか、反語的な言い方だ。
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