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「君は野生の本能でテストを解いていくワイルドなタイプに見えたから」
と将之が言うと
「その通りです。俺は、ミラクルペンソーとダウジング(※1)が得意っすよ。でも神託って、なかなか降りてこないっす。だから神託にばかり頼るのも不安なんで参考書を買いに来ました」
神妙な顔をして俊也が答えた。
「しんたく……?」
思わぬ言葉に、将之が訊き返した。
「今日は……きっと今度こそ読む気になれる参考書に出会える気がしたんです。まあ、実際に出会ったのはライオさんですが」
そんな気がして本屋に来ている段階で、やはり第6感に頼っている。
「ところで、ライオさんも買い物でここに?」
将之は大きな買い物袋を提げていた。
「実は、僕の趣味は読書なんだ」
人懐っこい笑顔で、答える。
「へえ、それこそ意外っす。ライオさんは、アクティブなアウトドアっぽいことが趣味かと思ってましたから」
「そうだね。野外プレイは好きだけど、先輩が嫌うんだよね」
「え?」
「いや、ごめん。何でもないよ」
将之は顔の前で手の平を横に振り、「何でもない」アピールをした。
(危ない、危ない。また先輩に怒られる所だった)
「そこのモールで買い物を済ませて、その後にちょっと本屋に寄ったんだ」
「へえ。何を買ったんです? それも意外っす」
俊也は、将之にあまり家庭的なイメージがなかった。
敦をあんなにもあっさり手懐けたコミュニケーション力。
知識も豊富で、尾行のバイタリティにも目を見張るものがある。
「買ったのは、コーヒー豆とグルタミン酸ナトリウム(※2)だよ」
「え? グ……?」
俊也が聞きなれない言葉に戸惑ったので、将之が袋を広げて中の荷物を見せた。
「こっちがコーヒーね。同居人がコーヒー好きなんだ」
「……こ、この白い粉は……?」
怪しげなビニール袋に包まれた大量の白い粉を前に、俊也が青ざめた。
(※1)ミラクルペンソーとダウジング・・・俊也が得意なテスト処世術。外れると、大ダメージを食らう。
(※2)グルタミン酸ナトリウム・・・原料はサトウキビ。安全安心な調味料です。
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