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慶秀大学海浜研究所 2
「はあ? いいわけないでしょ?」
言い出すタイミングをはかっていたら、夜になってしまった。
寝る前に、思い切って寝室で知己が打ち明けると、けんもほろろに将之に言われた。
(やっぱり……!)
十分、想定内の返事だった。
「家永さんばかりか門脇君もいるんでしょ? 最悪じゃないですか。スペードのAにジョーカー添えられて出された気分です」
トランプに例えて、嫌がられた。
「……き……菊池も居るけど」
言っても無駄かなと思いつつ、知己が控えめに主張すると
「誰ですか? それ」
やはり頭数に入れてもらえない菊池だった。
「……行きたいんですか?」
「家永が困っているから、な。なんとかしたいと思っている」
正直に答え、次も何か言われると身構えていた時だった。
「……と、言いたいところですが。実は、この夏、アメリカ研修が入りまして」
「え?」
急なことで理解が追いつかない。
「視察と見学で3週間ほどアメリカに出張行ってます。ついでに礼ちゃんちにも1週間ほどお邪魔しようかと休暇申請出してきました」
「はあ!?」
それではトータルまるまる1カ月じゃないかと知己は思った。
「それじゃ……」
戸惑う知己に
「僕は仕事ですから、仕方ないです」
すまして将之が答える。
「でも、お前……そんな、急に」
「急な話でもないですよ。春先にはお知らせしていたと思います」
そういえば、「もしかしたら、僕、夏に研修で出張するかもしれません」と将之が言っていたのを思い出した。
将之のような将来有望な人材を若いうちに研修を積ませる。
割とよく聞く話に、知己も「ふーん」程度にしか聞いていなかった。
「だけど、場所と期間は聞いてなかった……」
そんなに遠くて長いなんて。
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