慶秀大学海浜研究所 2

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 あからさまに落ち込む知己に、将之は機嫌を直した。 「……僕が居なくて寂しいから、浮気します?」 「しねえ」  ポロリと本音で即答し、知己は思わず「ぁっ……!」と手で口を押さえた。  自分でも、うっかりの即答だったのだろう。  真っ赤になってしまった。  その後は隠してもしょうがないと思ったのか 「絶対に、しねえ」  と、もう一度言った。 「……じゃあ、海に行ってもいいですよ」  ベッドの脇に将之がゆったりと足を開いて座り、膝をポンポンと叩いて知己を招いた。 (そっか。それはこいつも同じか……)  知己は、素直に従った。  膝に座るのはちょっと恥ずかしいので、将之の足の間のベッドの部分に座った。  将之の胸辺りに、知己の肩が当たる。 「……」  触れた部分が、暖かく感じるのは気のせいではない。  知己が納まると、将之は腕を回してぎゅっと抱き寄せた。 「一か月分、充電させてください」  ふざけた言い方だが、将之も一か月離れることは寂しいのだろう。  知己には、甘えたいように見えた。 「なあ……一か月はちょっと長くないか?」 「お仕事ですから、仕方ありません」  感情を感じさせずに抑揚なく言うのも、多分、そう。本当はすごく寂しいのを誤魔化している。 (だったら、研修終わってすぐに帰ってくればいいのに……)  知己に少し意地悪な気持ちが芽生えた。 「……礼ちゃんに会うのを短くするのは?」 「せっかくアメリカくんだりまで行くんですよ。ついでです」  さっきと同じような将之の言い方だが、これには違和感を感じた。  一週間も滞在予定がな訳がない。 (あ。今のは、割と楽しみにしているのをそうでもない風に言ったな)  長く一緒に居ると、分からなくていいことまで分かってしまう。 (まあ、こいつにとって礼ちゃんは俺とは次元が違う位置でとても大切な存在っていってたし、妬いても仕方ないよな……) (ん? 待てよ。そういえば……)  知己は不意に思い出した。 「あ! それでこの間、白い粉末を買ってたのか! あれは礼ちゃんへのお土産だったのか!」 「そーでーす」  もれなく税関で止められる将之の姿が想像できた。 (本当に性格も外見もよく似た兄妹だなー……)  知己が呆れていると、将之が知己の頭に顎をぽふんと乗せてきた。
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