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多分、そんなに仲良くはない。
だったら家永が言うはずだ。言わないということは、多分、真逆の意味だろう。
(将之……、ちゃんとした友達いるんだろうか?)
(聞いたら、後藤君とか職場の部下を答えるんだろうな)
(転勤族で、近場には友達いないって言ってたな。近場にはって部分をめちゃくちゃ強調して)
知己はちょっとかわいそうな子を見る目になっていたが、お互いに肩に顔を乗せていたので将之に気付かれずに済んだ。
将之の脇からそっと背中に手を回して、ポンポンと甥っ子にするように優しく数回押さえた。
「……あの、何か勘違いしてませんか?」
お互いの顔が見えない位置。真意を測りかねた将之が困ったように言うと
「よしよし」
小さく知己が答えた。
「……まあ、先輩が勝手に返事せずに僕をお伺いを立てて聞いてくれたのは嬉しかったですし。だから……行ってもいいですよ」
今度は少し離れて、にっこりと将之は笑顔を見せた。
(家永からあらかじめ話を聞いて内容を把握してたくせに、あんな嫌な言い方しやがって……)
と思いはしたが、不思議と怒りはあまり湧かない。
むしろ、一か月会えないことの方がショックだ。
「……」
どう答えようか迷っているうちに、将之の顔が近付いてきた。
結局その夜は「一か月分の充電」としつこく迫るので、知己はメロンパフェ分以上のカロリーを将之の上で消費することになった。
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